男「ゲームが現実になるゲーム機?」天使「そうでーす♪」/前編

※内容がR-18です。天使は特に下ネタを発します。
下ネタが苦手、18歳未満はこの台本を使わないことをオススメします。
元ネタは2chで公開していたSSです。

配役表(3:2:0=5)被り有 / 演技時間:2時間程度

ユータ
15年の付き合いがある幼馴染とやっと恋人同士になり、日々を楽しく過ごしていたら突然振られる。
突然のことで、混乱すると同時に落ち込んでいるところにテンシが現れて…。
※ストーリー上名前が必要だったため、男=ユータとなっている。

テンシ
常時ハイテンションの天使。かなりのおバカドジっ子で、ユータを振り回す。
両性具有なため、男でも女でもある。そのため、女性っぽいが胸はまな板。
【ど】がつくほどの変態。下ネタトークが止まらない。
声が高めの男性でも違和感がないぐらいの下トーク。
キャラがコロコロ変わるので演じるときには要注意。

サトミ
ユータの15年来の幼馴染で、彼女だった。
ユータに突然別れを告げ、他の男へ乗り換える…がまだユータを引きずっている。

ナオヤ
ユータの友人。サトミと並ぶ長い付き合い。

リサコ
ユータの友人。高校に入ってから出来た女友達。
正義感が強く、リーダーシップをとりたがる。

タナカ
普通の男子生徒。アソコのサイズも普通。

フジタ
ゲームのためなら風呂にも入らない。
典型的なオタクキャラクター。

教師
一瞬で出番が終わるかわいそうな人。

警察
テンシ「おさわりまん」 ユータ「おまわりさん、な」

クラスメイト
掃除当番を押し付けて行ってしまう子。

イケメン
学校の門で待ち続けるサトミに恋する男子生徒。




『』のセリフは外に出ていない声です。脳内や心の中でのセリフです。
配役・??の正体はあぶり出しをするとすぐ下に出てきます。



ユータ 「なにそれ。 冗談?」
テンシ 「冗談じゃありませーん! ホラホラ、私の背中見てみ?」
ユータ 「……背中?」
テンシ 「翼あるでしょ?」(パタパタ)
ユータ 「……コスプレ?」
テンシ 「もぅ! なら、触ってみんさい! ほれほれ!」
(ユータの方へ羽を押し付けながら)
ユータ 「うわ……あ、暖かい……」
テンシ 「でしょ? 暖かいから生きてる、冷たかったら死んでる、おーけー?」
ユータ 「お、おーけー……」
テンシ 「んで、私天使。 信じた?」
ユータ 「し、信じた……」
テンシ 「よっしゃ! 第一目標コンプリートッ! でねでね、本題に戻るんさー」
ユータ 「本題って……いや、その前にその天使様がなんでオレの前に居るんだよ!」
テンシ 「天使様だって……(もじもじ)
 やぁん、照れちゃう!(/ω\*)」
ユータ 「話聞けよ! 何でオレなんかにそんな超常現象起きるんだよ!」
テンシ 「だーかーらー! 本題に戻るって言ったじゃーん? 黙って話聞いてみ?」
ユータ 「……わかった。 で、本題ってさっきのゲームが現実になるゲーム機?」
テンシ 「そうでーす♪」
ユータ 「それをオレにくれるってのか?」
テンシ 「ハッ! 何言ってんの、コイツ。 そんなレア物くれてやる訳ないじゃん」
(はーやれやれ、という顔で)
ユータ 「てめぇ、帰れよ!」
テンシ 「ま、待って! 話を、話を聞いて下さい! 窓から追い出そうとしないで!」
ユータ 「……つまり、話を要約すると、だ。
 お前が内緒で持ち出したそのゲーム機を取り戻すのに協力しろ、と」
テンシ 「ざっつらいっ!(=That's right!/その通り!という意味)
 いやー、まさか下界に落としちゃうとはねー……」
(自分の頬をぽりぽりかきながら苦笑い)
ユータ 「だいたい、なんでそんな危険なもん持ち出したんだよ?」
テンシ 「いやぁ、暇で暇で。 ほら、天界で使う分にはただのゲーム機だし?」
ユータ 「疑問形にされても知らねぇよ……それから、なんでオレな訳?
 だいたい、オレ今そんな事に関わってる場合じゃねえんだよ。 別の事で頭が……」
テンシ 「……彼女に振られたんだろ?」
ユータ 「グハッ!」
テンシ 「しかも、15年来の幼馴染。 この間付き合い始めたばかりの熱々カップル。
 よーし、もっと傷をえぐってやろう! ほれ、回想シーンスタートッ!」





サトミ 「……別れてくれないかな?」
ユータ 「……は?」
サトミ 「もう、これ以上ユータとは付き合えない……」
ユータ 「ハ、ハハ。 お前、冗談下手だな……笑えないぞ、それ」(顔がひきつるも我慢する)
サトミ 「……冗談じゃないの。 私、本気だから……」
ユータ 「う、嘘だろ? なぁ、なんか怒ってるのか? オレが悪かったなら謝るから……」
サトミ 「違うの。 ユータは何も悪くないの。 でも……」
ユータ 「……でも?」
サトミ 「……他に、好きな人が出来たの」
ユータ 「っ! な、なんだよそれ! 浮気じゃねぇか! おい、誰だそいつ! 言えよ!」
サトミ 「……本当にゴメン。 でも、どうしても彼が好きって気持ちが抑えられないの……
 どうしてだろうね? 今じゃ、彼の事しか考えられない……」
ユータ 「ふ、ふざけんな! 誰なんだよ、その彼って奴は!」
サトミ 「……言えない。 とにかく、そういう訳だから。 別れてくれる?
 ……私の事、いくらでも悪く言っていいから……本当にゴメンね?」(足早に去って行く)
ユータ 「おい、待てよ! 納得いかねぇぞ、待ちやがれサトミぃ!」





テンシ 「っと、1時間前の映像をお送りしましたー♪」
ユータ 「……」(黙って大粒の涙を流す)
テンシ 「ハッ! リア充なんか滅びればいいんだ! やーい、ざまぁwwww」m9(^Д^)プギャー
ユータ 「……殺す、てめえは絶対殺す」
テンシ 「え? なんで私が知ってるかって? 私、恋のキューピッドだもん、テヘ」(ゝω・)テヘペロ
ユータ 「聞いてねぇよ! てか、キューピッドならオレらの恋を成就させろよ!」
テンシ 「だーかーらー、その為に来たんだってヴァ(ば)」(らき☆すたの日下部みさお風に)
ユータ 「……は?」
テンシ 「正確に言えばね。 さっきのゲーム機の影響なの、それ」
ユータ 「それって……彼女と別れた事、か……?」
テンシ 「私が落としたゲームね、誰かが使ってるみたい。 で影響を受けてる、と
 ほら、私これでも天使だし? 捻じ曲げられた運命って見えちゃうんだよねー?」
ユータ 「それが、サトミに見えたって事か……?」
テンシ 「そそ、他にも何人か居たけど。 その彼女がヒロイン役っぽかったからさー。
 なので、貴方に協力を仰ごうと思って来ちゃった、おっけー、ウフフ!」
ユータ 「ローラ風なのがうぜぇ。 てか、全部てめぇの不始末が原因じゃねぇか!」
テンシ 「あっ、バレた?」
ユータ 「なんでてめぇの尻拭いしなきゃいけねぇんだよ! ふざけんな!」
テンシ 「ふむ、それではキミ、手伝うつもりはないとおっしゃる……?」
ユータ 「当たり前だろ! こっちはサトミを取り戻さないといけないんだっての!」
テンシ 「わかってないなぁ……それ、無理なんだって」(やれやれ)
ユータ 「……どういう事だ?」
テンシ 「んー、ゲームが現実になるって言ったでしょ?
 つまり、人間はそのゲームに逆らえないの。 だから、キミ振られたんじゃん?」
ユータ 「……つまり、サトミはゲームに支配されて、ゲームの通りにオレを振った……?」
テンシ 「そ、多分ギャルゲーか何かじゃない? 持ち主が主人公で、サトミって子がヒロイン。
 ギャルゲーのヒロインに彼氏いちゃおかしいっしょ? いや、たまにあるけど」
ユータ 「じゃ、じゃぁ……サトミは、その主人公って奴に惚れてしまうってことかよ!」
テンシ 「しまう、っていうかー、もう惚れちゃってるっていうかー?」
ユータ 「てめぇ、早くなんとかしろよ!」
テンシ 「自分で出来るならしてるってば。 でもねー、天使は人間に不干渉でねー。
 人間に対して、直接干渉することは許されないわけー。 クビになっちゃうし」
ユータ 「……それで、オレにそのゲーム機を取り戻せ、と?」
テンシ 「いかにもー。 いいじゃん、ゲーム機取り戻せばサトミって子も取り戻せるし。
 それに、放っておいたらこのまま主人公役の人に取られちゃうよ?」
ユータ 「……選択肢はないわけだな」
テンシ 「ないね! 完全に、全く、明らかにない!
 ちなみにー、直接サトミって子を取り戻そうとしても、多分失敗するからね?」
ユータ 「なんでだ? またこっちに惚れなおさせれば……」
テンシ 「彼女は絶対にキミに惚れない。 キミはゲームの進行を妨げる行動は取れない
 ゲームが現実を支配してるんだもん、現実はゲームに干渉出来ないってことさ!」
ユータ 「マジかよ……」
テンシ 「マジマジ! 例えば、今からその子に電話かけて告白してみそ?」
ユータ 「……いいだろう、どうせこれ以上悪くなることはないだろうし」(電話をかける)
サトミ 『……もしもし。 何の用? さっきの話ならもう……』
ユータ 「あの、そのな? オレ、やっぱりお前……ぐ!? が……あぁ……」(突然胸が苦しくなって声が出ない)
サトミ 『……何? ……用事ないなら切るから……』
ユータ 「うぁ……あ……」(口を動かすが声が出ない)
サトミ 『……さよなら。 ……もう、電話はして来ないで……』(電話が切れる)
ユータ (切れると同時に楽になる)
「あ……ガハッ! グ……なんだよ、今の……」
テンシ 「わかったっしょ? ゲームを破綻させかねない行動は出来ないのだ!」
ユータ 「クソ……最悪だ。 ……理解した。 とんでもない事してくれたな、お前」
テンシ 「やだなぁ、そんなに褒めないでよぅ!(/ω\*)」
ユータ 「褒めてねぇよ!」
テンシ 「それじゃ、お互いの利害が一致した所で、これから宜しくね!」
ユータ 「ふざけんな! オレに何の恨みがあるんだ、くそぉぉぉぉぉ!





ユータ 「……で。 これからどうすりゃいいんだ?」
テンシ 「まずは、誰がゲーム機を持っているかを探さないとねー?」
ユータ 「それは分からないのか? こう、魔眼みたいなので」
テンシ 「へへ、天使アイは視力2.0で壁のポスターも滲(ニジ)んで見えますぜ?」
ユータ 「それ、視力2.0ないだろ……つまり、役立たずってことだな、その節穴は」
テンシ 「直接見れば分かるけどねー、漂ってるオーラというか、カンで。
 ま、どうせすぐ分かるんだし? そっちは問題ないさー!」
ユータ 「なんですぐ分かるんだよ?」
テンシ 「だって、そのサトミちゃんがどうせ付き合おうとするでしょ、その主人公役と?」
ユータ 「付き合ったら手遅れじゃねぇか!」
テンシ 「だいじょーぶい! ほら、考えてみそ? 今反映されてるゲームが何か」
ユータ 「多分ギャルゲーなんだろ?」
テンシ 「おうよ! ただ、多分持ち主も完全には使いこなせてないんだろうねー?」
ユータ 「どういう意味だ?」
テンシ 「ギャルゲーって、どんなゲームだったっけ?(・∀・)ニヤニヤ」
ユータ 「そりゃ、女の子を口説いて、恋人同士になる過程を楽しむ……あ」
テンシ 「わかっちった? そ、普通のギャルゲーなら、恋人になるのが最終目的。
 つまり、好意を持ち始めてから攻略完了までそれなりの猶予(ユウヨ)があるのだー!」
ユータ 「で、でもよ、サトミはもう主人公役に好意持ってるんだろ?
 主人公役が告白でもしたら、即付き合うことになるじゃねぇかよ!」
テンシ 「勘違いしないよーに! 主人公役も、ゲームの支配からは逃げられない!
 過程をすっ飛ばそうとしても、さっきのキミみたいに行動を阻害(ソガイ)されちゃうぞ?」
ユータ 「なるほどな……つまり相手が攻略するまでにこっちがゲームを取り戻せば勝ち、か」
テンシ 「多分ねー?」
ユータ 「多分って……おい、なんでそんなあやふやなんだよ?」
テンシ 「だってそのゲーム機、封印されてたから詳しい事分かんないもん!(`・ω・´)」
ユータ 「だから威張(イバ)るな! だいたい、それならさっきまでの話はなんだったんだよ!」
テンシ 「へ? あぁ、説明書の受け売りだけど?」
ユータ 「……」
テンシ 「あ、一応ネットで落とした説明書の写し、見る?」
ユータ 「そんな大事なもん、一番最初に見せろボケ!」
テンシ 「それじゃ、大事なとこ、見せてあげる……き、キミにだけなんだからね?////」
(おもむろにパンツに手を入れて取り出す)
ユータ 「……お前、それどこから出した?」
テンシ 「私のパンツの中で暖めておきましたゆえ」
ユータ 「帰れ!」





取扱説明書 セガタサーン取り扱い説明書
P.666 地上界で使用する際には

・互換性(ゴカンセイ)を気にせず、ゲームならなんでもプレイできます。
 (テレビは不要です。 自動的に内容を認識し、現実に反映します)

・ゲームの内容が現実に反映されます。
 (人間関係や、劇中人物の運命のみです。 財産など物理的な物は反映されません)
 ※現実とかけ離れた世界観であれば、人間関係のみ反映されます。

・一度ゲームを始めると、始めた本人以外に止めることは出来ません。
 ※必ず本人がいつでも中止できる環境でご利用下さい。

・ゲームを止めると、歪(ひずみ)が発生しないようゆっくりと自然に影響が薄れていきます。

・ゲームクリアを迎えると、劇中人物のその後が描かれている場合はそれに従います。
 ※描かれていない場合は自然に影響が薄れていきます。

・ゲームの内容が反映される人間は、ゲームに即して記憶と意識が改変されます。
 (ゲームを破綻(ハタン)させないよう役割に反する行動は制限されてしまいます。)
 ※ゲームを始めた本人と天使に接触した人間は記憶と意識を改変されません。
 (行動は通常と同様に制限されてしまいます)





ユータ 「……無茶苦茶だな。 なんでこんなもんがあるんだよ……」
テンシ 「いやぁ、昔失敗した3DTってゲームの関係者が天界に来てから病んじゃってねー。

 『生まれ変わったら、このゲーム機でリア充になるんだ!(`・ω・´)』

 ってなわけですよ。 まぁ、こんなの作った罪で地獄をバカンス中だけどね?」
ユータ 「……とにかく、だ。 この、最後の項目(コウモク)なんだけどな?」
テンシ 「ひょ? ゲームを始めた本人〜ってとこかな? かな?」
ユータ 「あぁ。 『天使に接触した人間は記憶と意識を改変されません』ってあるけどさ
 これ、お前がサトミに接触すれば、元に戻って一発解決じゃね?」
テンシ 「っ! 貴様、天才か!」
ユータ 「いや、そんな大した事では……////」
テンシ 「……とでも言うと思った? 馬鹿なの? 死ぬの?(・ー`・)」
ユータ 「……てめぇ……」(頬がひきつる)
テンシ 「その次の行読んでみ?」
ユータ 「『行動は通常と同様に制限されてしまいます』……」
テンシ 「声が小さいっ! もっと大きな声で、腹の底から! さんはいっ!」
ユータ 「『行動は通常と同様に制限されてしまいます』っ!!!!」
テンシ 「つまり、記憶と意識が戻っても支配されたままってこと。 今のキミみたいに」
ユータ 「さっきみたいに、動けなくなる……?」
テンシ 「さらに、キミへの思いを思い出したまま、主人公役と付き合うことになるねー?
 なに? 嫌なのに身体は自由にならず、好きでもない男とキスとかさせるって?
 うっわー、引くわー、めっちゃ引くわー! この外道! いわば外道オブ外道!」
ユータ 「……なんだよ! ちょっと勘違いしただけじゃねぇかよ!」
テンシ 「とにかく、サトミちゃんを苦しめたくないならその手は愚策(グサク)だねー」
ユータ 「とすると、やれる事は主人公役を見つけて……」
テンシ 「ゲーム機をゲームの邪魔しないよう気をつけながら取り戻す、そしてキミは死ぬ」
ユータ 「なんで死ぬんだよ!」
テンシ 「うっわ、つまんねーツッコミ! 5年程関西で勉強してこいよなー」
ユータ 「クソ、天使ってのはこんな人格破綻(ジンカク・ハタン)した奴なのか……イメージと違いすぎだ……」
テンシ 「失礼な! 他の天使はみんなイメージ通り真面目だっての! 馬鹿にすんな!」
ユータ 「お前が馬鹿なんじゃねーか!」
テンシ 「ところでキミ、ご家族は?」
ユータ 「二人とも死んだよ。 今はおじさんに仕送りしてもらいながら1人暮らし」
テンシ 「そっか……ご愁傷さまだね……」
ユータ 「……まぁ、昔の話だから。 気にするなよ?」
テンシ 「気にするわけねーじゃん! 私天使だよ? むしろもっと死んで天界来い、みたいな?」
ユータ 「……お前に殊勝(シュショウ)さを期待したオレが馬鹿だった」
テンシ 「ところで、晩御飯はまだでしょうか? 私、下界のご飯が楽しみで……」
ユータ 「おま、飯までたかるつもりかよ!」
テンシ 「勘違いしないで貰おう! ご飯だけじゃなくて寝床もたかるつもりだ!」(最高のドヤ顔)
ユータ 「帰れよ! さっさと天界に帰ってくれ!」
テンシ 「だが断る」
ユータ 「うぜぇ……さっさとゲーム機取り戻さないとこっちの精神が持たねぇ……」
テンシ 「まーだー? はーやーくー!」(箸で茶碗を叩く/チンチンッ)
ユータ 「うるせぇ! 大人しく待ってやがれ!」
テンシ 「しょうがないなぁ、パンでも食べて待ってるから早くねー?モグモグ」
ユータ 「まて、そのパンはどこから出した?」
テンシ 「パンだけにパンt」
ユータ 「言わせねーよ! ……ほれ。 さっさと食らってさっさと寝ろ」
テンシ 「ほほぅ、なかなか旨そうではないか……久しぶりの馳走(チソウ)、喜んで頂こう」
ユータ 「ただの野菜炒めだぞ? お前、普段何食ってんだよ……」
テンシ 「え? フォアグラとか……」
ユータ 「ふざけんな! てめぇ、オレだって食ってみてぇよそれ!」
テンシ 「いやぁ、天界って皆ゴロゴロ食っちゃ寝で、鳥がフォアグラになるんだよねー」
ユータ 「クソ、このブルジョアが……」
テンシ 「では頂きます! ガツガツムシャムシャ……」
ユータ 「擬音を口に出すな……で、ご感想は?」
テンシ 「旨い! 女将(オカミ)をよべぃ!」
ユータ 「そんなのいねーし。 てか、天使も普通に飯食うんだな……」
テンシ 「いや、別に食べなくても生きていけるけど? ほら、これは嗜好品(シコウヒン)?」
ユータ 「じゃぁ食うなよ! こっちは生活費ギリギリなんだぞ!」
テンシ 「ちなみに、排泄するかどうかはナイショ。 アイドルみたいなものよん☆」
ユータ 「クソ……飯食ってるときに下品な奴だな、お前……」
テンシ 「プ……フフ、と、トイレの話してる時にクソだって……ギャハハハハ」
(o_ _)ノ彡☆ギャハハ!! バンバン!
ユータ 「うるせぇ! 黙って食いやがれ!」
テンシ 「いやー、満腹満腹。 まぁ、そもそも空腹にならないけど」
ユータ 「飯食った気がしねぇ……おい、オレ風呂入ってくるから、部屋いじるなよ?」
テンシ 「その代わりオレの息子を弄(イジ)ってくれ、とか! キャー、キャー!////」
ユータ 「……ようやく分かった。 コイツの答えは期待しちゃいけないんだ……」
テンシ 「じゃ、案内して下さい」
ユータ 「……どこへ?」
テンシ 「やだなぁ、今の話の流れでわからないなんて……ホントにキミはバカだなぁ」
ユータ 「なぁ、オレがバカなのか? 本当の本当にそうなのか?」
テンシ 「下らないことで頭を悩ませてないで、ほらお風呂場はこっちだよ!」(ユータの腕を引っ張る)
ユータ 「知ってるんじゃねぇかよ! というかなんで知ってるんだよ!」
テンシ 「いや、話しかける前にお宅拝見(ハイケン)してたから。 ほら、こうやって……」
ユータ 「おわっ! き、消えた?」
テンシ 『元々天使って実体ないからねー、見えるように実体化してただけだよ?』
ユータ 「頭の中に直接声が聞こえてくる……なんか気持ち悪ぃ」
テンシ 『以心伝心って奴? そっちも喋らなくても伝わるから、エロい事を考えるといい!』
ユータ 「断る。 というか、面倒だから元に戻れ……」
テンシ 『正直、実体化すると疲れるんだよねぇ……』

「まぁ、実体化しないとお風呂入れないもんな! よし、行くぜ!」(※真っ裸)
ユータ 「て、てめぇいきなり脱ぐな! しかもオレ、男だぞ!」
テンシ 「私天使だぞ!」
ユータ 「聞いてねぇよ! 恥じらいとか持てよ!」
テンシ 「フッ……なぁ、ユータよ。 キミは蟻(アリ)の前で服を脱いで恥ずかしいと思うかね?」
ユータ 「てめぇ……人をアリンコ扱いかよ……」
テンシ 「私は恥ずかしいぞ!」(仁王立ちしてドヤ顔している)
ユータ 「恥ずかしいならやるなよ!」
テンシ 「まぁ、ほら。 私、両性具有(リョウセイグユウ)だから、ユータみたいなもんだし?」
ユータ 「りょうせいぐゆう?」
テンシ 「フタナリって言えばわかる? ほら、ぞうさんついてるさー」
ユータ 「……ホントだ。 なんだ、男だったのか」
テンシ 「まぁ、ぞうさんをめくるとおまんこもあるんですが」
ユータ 「ブッ! か、隠せ!」
テンシ 「ゃん!//// 見ちゃだめぇっ!」
ユータ 「そっちじゃねぇ、なんで息子の方隠すんだよ!」
テンシ 「ちなみに、フタナリだからって

『らめぇぇぇぇ! おちんぽミルクでちゃうぅぅぅぅ!』

 とか言いませんので」
ユータ 「言ってるじゃねぇか!」
テンシ 「……ふーん? なるほどなるほど……へぇ、はーん?」
ユータ 「み、見るなよ!」
テンシ 「何を? もしかして、私の膣穴(チツアナ)を見ておったててしまったその貧相なモノを?」
ユータ 「も、もういい! 勝手に1人で入ってろ! グスッ……」(風呂から出て逃げていく)
テンシ 「あーあ、泣いちゃった。 からかいすぎたかな? 可愛いな、もぅ……クスクス」





テンシ 「おーい、ユータくーん? あーそーびーまーしょー!」
ユータ 「……」(そっぽを向く)
テンシ 「うふーん? ほーら、お姉さんの身体、食べてみたくなぁい?」
ユータ 「……」
テンシ 「……ごめんよぅ! ちょっとやりすぎた! 反省してるから無視しないで!」
ユータ 「……本当に反省してるのか?」
テンシ 「ホント! 本気と書いてマジって読むくらい! 何だったら身体(カラダ)でお詫びする!」
ユータ 「いらねぇ……初めてはサトミと、って決めてる」
テンシ 「まぁ、そのサトミちゃんは今頃主人公役の男と一晩を共に……ごめんうそ泣かないで」
ユータ 「とにかく、そのテンションを少し下げてくれ。 この調子だと犯人探し所じゃない」
テンシ 「……ごめんなさい」
ユータ 「いきなり雰囲気変わったな、おい」
テンシ 「……ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……
 生きててごめんなさい天使でごめんなさいナイスバディでごめんなさい……」
ユータ 「待て、関係ないの入ってたぞコラ」
テンシ 「そっか、生きてるからダメなんだ、死ねばいいんだそうだ死のうすぐ死のう!
 えへへ、手首切れば死ねるかな? ダメなら美味しいもの沢山食って老衰(ロウスイ)で……」
ユータ 「なんで後半は大往生(ダイオウジョウ)狙いなんだよ! ……というか、お前わざとだろ、わざとだな?」
テンシ 「分かった? 最近流行りのヤンデレ風味にしてみましたー!」
ユータ 「ハァ……もういい。 頭痛くなってきたから寝る」
テンシ 「ん。 さ、おいでボウヤ……」
ユータ 「……いつの間にオレのベッドに潜り込んだ? というか、お前は床だ」
テンシ 「ひっどーい! 女の子に、床で寝ろって言うの!?」
ユータ 「さっきぞうさん見せ付けてきた癖に何を言う」
テンシ 「頼むよー、一度でいいからふかふかのベッドで寝てみたいんだよぅ!」
ユータ 「……あー、わかったわかった。 オレが床で寝るから……」
テンシ 「よっしゃ! それじゃ、おやすみー!」
ユータ 「あぁ……おやすみ……」
テンシ 『……お兄ちゃん、襲わないでね……?(ウルウル)』
ユータ 「いいから、もう寝てくれ……って、ちょっと待て」
テンシ 『ふぇ? どうかした?』
ユータ 「お前、姿消してすり抜けてるじゃねぇか! ベッドの意味ないじゃん、それ!」
テンシ 『だって、実体化って疲れるじゃん?』
ユータ 「……もういい。 こっちの方が疲れる……」





サトミ 『あの、ね……? 今日は、ユータに大事な話があるんだ……
 その……あぁん、もぅ! は、恥ずかしくって顔見れない……
 ……え? 今なんて……
 っ! バカ! 私から言おうって思ってたのに……!
 ……うん。 私も……私も、ずっと……キミの事……
 嬉しい……! 私も…大好きだよ……!』





ユータ 「……ん……」
テンシ 「んふ、アナタ……朝ですよ? 起きて下さい……」(んー、とユータにキスしようとする)
ユータ 「……朝っぱらから何やってやがる」
テンシ 「新婚さんの朝の情事(ジョウジ)ごっこ? ここから我慢できなくなったキミが私を……」
ユータ 「起きたばかりなのに果てしなくうぜぇ……」
テンシ 「起こしてもらった癖に感謝の一言もないのかー!」
ユータ 「はいはい、ありがとうございます。 で、学校の準備あるから大人しくしてろ」
テンシ 「うぃ。 あ、私も学校着いてくからねー?」
ユータ 「勘弁してくれ! せめて、学校でくらい静かな日常を過ごさせてくれ!」
テンシ 「サトミちゃんが寝取られそうな日常を?」
ユータ 「ぐ……」
テンシ 「私がいないと、ゲーム機の影響下にある人わかんないよー?」
ユータ 「……くそ、やむを得ないか……でも、絶対実体化するなよ?」
テンシ 「服装変えられるから、学校の制服に着替えてもいいけど?」
ユータ 「念のために聞くけど、その羽は隠せるのか?」
テンシ 「うん、無理!^^」
ユータ 「お願いします頼むから姿消して下さいお願いします」





ユータ 「さて、行くか」
テンシ 『うわ、独り言いってら……キモッ!』
ユータ 「うるせぇよ! てめぇに言ったんだっつーの!」
テンシ 『ゃん! 怒らないでよー、ほら静かにしてるからさー!』
ユータ 「だから、何も喋んな! いい加減にしろ!……あっ…」
テンシ 『およよ? これは……朝からイベント発生ですなぁ!』
サトミ 「……ご、ごめん。 そうだよね、私、ユータに挨拶する資格もないよね……」
ユータ 「ま、待てそうじゃ……ぐっ!?」(再び胸に激痛が走り喋れなくなる)
サトミ 「……昨日の電話はごめん。 ちょっと冷たかったって謝ろうと思って……」
ユータ 「う……あ……」
サトミ 「そうだよね。 他の人好きになって振ったのに前のように幼馴染でいようとか……
 都合の良すぎる事考えてた。 ユータの気持ちも考えないで、ごめんね?」
ユータ 「ぁ……」
サトミ 「……何も言ってくれないんだね。 当たり前か……
 ……本当にゴメン。 もう、話しかけないようにするから……ごめんね!」(早足で去る)
ユータ 「ぅぁ……ガハッ! ま、待て! クソッ、何なんだよ、これはっ!」
テンシ 『早速(サッソク)、行動制限に引っかかっちゃったみたいだねー? なかなか厳しいね、これは』
ユータ 「もしかして、アレか? サトミに話しかけることすら制限されるって事か……?」
テンシ 『そうかもねー? 会話が成立しただけでゲームが破綻(ハタン)しかねないって事かも?
 いいねー、それ程までにお互い想い合ってたって事じゃん! ヒューヒュー!』
ユータ 「ちゃかすな! こっちはそれ所じゃねぇんだよ……クソ、マジで心が痛い……」
テンシ 『あー、分かる分かる。 キミの気持ちダイレクトにこっち伝わってくるからさー』
ユータ 「……黙れ。 二度と言わねぇからな」
テンシ 『へいへい。 あ、キミも黙った方がいいよ? ほら、さっきから独り言……』
ユータ 「……あ」
ナオヤ 「よーっす!」
ユータ 「……ナオヤか。 おはよう……」
ナオヤ 「……どうした、なんか元気ないな。 またゲームで徹夜か? 良く出来るよな……」
ユータ 「そんなんじゃねぇよ……」
フジタ 「フヒヒ、面白いゲーム貸しましょうか? 何日も寝る暇を惜しむような!」
ユータ 「寝ないのは勝手だけど、風呂くらい入れよな……」
ナオヤ 「おい、いきなり会話に割り込んでくるんじゃねぇよ……」
リサコ 「おはよー! あれ? めずらしいじゃん、サトミと一緒じゃないの?」
ナオヤ 「そういや、そうだな。 どうした、ケンカでもしたか?」
ユータ 「……ちょっとな」
テンシ 『ふむ、幼馴染のナオヤくんに、高校に入ってからの友達であるリサコちゃんかー
 チッ、友達沢山で充実した高校生活送りやがって、このリア充が!』
ユータ 『うるせぇ、勝手に人の心読むな。 それより、この二人はどうだ?』
テンシ 『んー、中々のイケメンと可愛い子だね。 是非この二人と3Pしてみたいところ』
ユータ 『誰も顔についての感想なんぞ聞いてねぇ! ゲームの支配下にあるのか?』
テンシ 『……えっとね、わかんなーい、ウフフ!』
ユータ 『ふざけてる場合か。 いいから、さっさと結果を言えよ』
テンシ 『いやいや、旦那。 マジで分からないっての、これが!』
ユータ 『……どういうことだ?』
テンシ 『いやー、私も今気付いたんだけどさ。 ほら、今私実体ないじゃん?
 おかげで、天使アイが働かないんですよ、これが。 まさに節穴(フシアナ)、HAHAHA!』
ユータ 『……つまり、確認したけりゃ実体化する必要がある、と?』
テンシ 『そういうことですな。 いや、まったくもってすまんこ!』
ユータ 「……ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ!」(ガタッと席から立ち上がる)
ナオヤ 「っ! お、おいユータどうした!」
リサコ 「ユータくん!? だ、大丈夫?」
ユータ 「あ……」(赤面)
テンシ 『あーあ、やっちまったなぁ! ……いやほんとごめんそんな怖いこと考えないで』
ナオヤ 「……本当に、何かあったのか? さっきから難しい顔してたし……」
リサコ 「やっぱり、サトミの事? 私たちで良かったら、相談乗るよ?」
ユータ 「あぁ……」
テンシ 『とりあえず、相談してみたら? ほら、サトミさんを取り戻そうと行動したら……』
ユータ 『なるほど、制限がかかればゲームの関係者の可能性あり、か』
テンシ 『そそ。 支配を受けてないモブになら、何をしても自由だからさー』
ユータ 『そうだな……やってみて、損はないか……』
ナオヤ 「……やっぱり、言えない……か?」
ユータ 「……いや。 お前たちには話しておくよ……」
リサコ 「……無理は、しないでね?」
ユータ 「実はさ……その……サトミに、振られた……」
ナオヤ
リサコ
「「……は?」」





ナオヤ 「なるほどな……」
リサコ 「サトミ、ひどい……最低だよ……」
ユータ 「いや、きっとサトミは混乱してるだけだと思う。 だから手伝ってくれないか?」
リサコ 「あの子を取り戻すってこと?」
ユータ 「そうだ。 その、オレは色々あって直接サトミと話せなくてさ……」
ナオヤ 「そっか、その事でケンカしたんだな? それで……」
リサコ 「任せて! アタシたちなんでも手伝うよ! ね、ナオヤ!」
ユータ 「ありがとう、リサコ、ナオヤ! 本当に助かるよ……」
サトミ 「おはよ……」
リサコ 「あ、噂をすれば……サトミ」
サトミ 「……」(チラ見するが通りすぎる)
リサコ 「……やっぱりユータの事気にしてるじゃない。 きっと混乱してるだけだよ……」
ユータ 「そうだと良いんだけどな……」
ナオヤ 「っと、そろそろHR(ホームルーム)始まるな。 席に戻らないと……」
リサコ 「とにかく! 詳しい話は放課後って事で!」





教師 「〜であるからして……」
テンシ 『制限かからなかったじゃん?』
ユータ 『あぁ。 確定じゃないが、支配されてる可能性は低くなったな』
テンシ 『どする? やっぱ確認した方がいい?』
ユータ 『頼む。 放課後、周りに人がいなくなったタイミングで』
テンシ 『あいよー! てか、ゴスロリの格好すれば羽ついてても良くね?』
ユータ 『誤魔化せはするけどな。 メチャクチャ目立つぞ、それ。
 なにより、学校内にそんな奴がいたら即連行だ。 せめて放課後にしとけ』
テンシ 『おっけー、わかったー、ウフフ!』
ユータ 『いい加減ローラ風な喋り止めてくれ。 机を殴りたくなる』





リサコ 「早速、サトミ奪還(ダッカン)作戦を開始するよ!」
ユータ 「放課後早々いきなりだな……」
ナオヤ 「何か考えはあるのか?」
ユータ 「まずは、サトミが好きになった相手を知らないとな。 敵を知らないと戦えない」
リサコ 「言えてるね。 といって、私たちが直接聞いても答えてくれないだろうし……」
ユータ 「だから、とりあえずサトミを尾行してみようと思う。 いつかは接触するはずだし」
テンシ 『こうしてストーカーが生まれるのであった……哀れ、サトミは嫉妬に狂ったユータに……』
ユータ 『うるさい、お前は支配状況の確認だけ考えてろ』
「……手伝ってくれるか?」
ナオヤ 「今日からか? オレ、今日は用事が……」
リサコ 「て・つ・だ・う・よ・ね? ユータとサトミの危機なんだよ? わかってる?」
ナオヤ 「わ、分かった……手伝う」
ユータ 「ありがとう。 それじゃ、アイツが動き始めたら後をつけるぞ?」
サトミ 「……」(そわそわして誰かを待っている)
ユータ 「……校門前から動かないな」
リサコ 「……そうだね。 誰かを待ってる……?」
ナオヤ 「そう見えるな」
リサコ 「……しかし、もう15分くらいああしてるよ? 待ち合わせにしては長くない?」
ユータ 「そうだな……何のつもりなんだ?」
テンシ 『あれだ、放置プレイって奴じゃね? 興奮してモジモジしてるようにも見えるし』
ユータ 『……お前、一回眼科行って来い』
テンシ 『残念! 今の私実体がない、よって眼球すらないから! むしろ、眼科が来い!』
ユータ 『おかげで完全に役立たずだけどな……』
リサコ 「っ! 誰かサトミに近づいてく!」
ナオヤ 「あれは……隣のクラスのイケメンだな……」
ユータ 「まさか……アイツと待ち合わせ、なのか……?」

『おい、テンシ! なんとか隠れて実体化してイケメンを確認してくれ!』
テンシ 『任せろ! ちょっくら行ってくるぜい! じっくりねっとり観察して来てやんよ!』
リサコ 「何話してるんだろ……あ、あれ? 私、目がおかしくなった?」
ナオヤ 「いや、オレも……突然、ゴスロリの女があの子の後ろに現れたような……?」
ユータ 「ブーッ!」

『おばか! もう少し登場の仕方ってものがあるだろうが!』
テンシ 『おっと、こいつは失敗失敗。 今姿消しますんで、はい』
リサコ 「!? こ、今度は消えた……え……え?」
ナオヤ 「やっぱりお前も見たか! なんだよあれ、ゴスロリの霊?」
ユータ 『全然わかってねぇじゃねぇかよぉぉぉぉ!』
テンシ 『分かってるって! あれだろ、もっと派手にすりゃ良かったんだろ?』
ユータ 『これ以上目立ってどうするんだよ!』
ナオヤ 「おい! どうしたんだよ、ユータ……さっきから変な顔して……」
リサコ 「あ……イケメンくんサトミから離れる……何の話してたんだろ?」
ユータ 「……わ、わからん……でも怪しいな。 ただ、一緒には帰らないみたいだけど……」
リサコ 「あ、サトミが動き出したよ! ほら、二人とも、後つけるよ!」
ナオヤ 「へいへい……」
ユータ 『で、どうだった? イケメンは支配されてたか?』
テンシ 『おうよ! 意志に反して捻(ネ)じ曲げられてる運命がシャッキリポンと見えた!』
ユータ 『シャッキリポン……い、いや。 とにかく、アイツも操られてるって事か……』
テンシ 『主人公役なのか、他の役なのかはわからないけどね! ホモの役に期待する!』
ユータ 『見たくねぇよ! それより、適当な所でこの二人の確認も頼むぞ』
テンシ 『イエッサー! 次はどうする? 空から降りてこようか? 爆発と共に登場?』
ユータ 『誰も見てないとこで静かに極自然(ゴク・シゼン)に登場しやがれ』
リサコ 「んー、サトミ、特に変わった行動はしないねー」
ナオヤ 「普通に本屋に寄って立ち読みしてるだけだな」
リサコ 「一応家までは着いて行くとして……こうなると、イケメンくんが怪しいかな?」
ユータ 「……そうだな。 今のところアイツが一番怪しい」
リサコ 「でも、それならなんで一緒に帰らなかったのか、って点がねー」
ナオヤ 「たまたま用事でもあったんじゃねぇの? それで、話だけして帰ったみたいな」
ユータ 「そう、かもな……」
テンシ 「きっとそうだよ。 多分、後で家に来て? 今日、誰もいないの……みたいな?」
リサコ 「さすがに、サトミはそんな子じゃないって……ユータ、アンタも手出してないでしょ?」
ユータ 「当たり前だろうが! オレはアイツの事大事だし、その、段階を踏んでから……」
ナオヤ 「このヘタレが。 そんな事だから、今回のような事になるんだろうが」
テンシ 「全くだ。 もうアナタのちんぽしか見えないのほぉ! くらい調教してれば……」
ユータ 「てめぇ、ふざけんな! ってうひょほぉぉぉぉぉぉ!」(勢いよく後ずさる)
リサコ 「だ、誰!? 何、このゴスロリコスプレ女は!」
ナオヤ 「ってか、いつの間に! しかも自然に会話に混じってやがった!」
ユータ 「テンシ! てめぇ、さっき言った事忘れたのかよ!」
テンシ 「うんにゃ? 『誰も見てないとこで静かに極自然(ゴク・シゼン)に登場しやがれ』でしょ?
 誰も見てない背後から静かに極自然に会話に混じりつつ登場しましたが、何か?」
ユータ 「く……微妙に人の言う事守りやがって……!」
リサコ 「……えっと、ユータくんの知り合い?」
ナオヤ 「オレも聞いたことないんだが。 どういうご関係で?」
ユータ 「あー、その、なんだ……」

『おい! なんとか誤魔化せ!』
テンシ 「私、ユータの母の弟の息子の嫁さんの友達の妹で、なんやかんやでユータと住んでます!」
ユータ 「そ、そう! オレの母さんの弟の息子の嫁の友達の妹で……って他人じゃねぇか!」
リサコ 「突っ込みどころが違う! ユータくんと住んでるって……なんやかんやって何!?」
テンシ 「なんやかんやは……なんやかんやです!」
ナオヤ 「そっか、なんやかんやか……苦労したんだな……」
ユータ 「そこ! なんやかんやで納得してんじゃねぇ!
 ……とまぁ、そういう訳で数日ほど預かることになっただけだ」
リサコ 「……いくら旅行だからって、遠縁(トオエン)のアンタに1人娘を預けるって?」
ナオヤ 「しかも、お前1人暮らしじゃねぇか。 それ、ホントか……?」
テンシ 「マジマジ! それに、こんなヘタレに私を襲う勇気ないから!」
ナオヤ 「まぁ、確かに……」
リサコ 「でも、やっぱり年頃の女の子と二人で住むなんて……何かあったら……」
テンシ 「だいじょぶ! 風呂場で裸を見られたくらいのラッキースケベしかない!」
ユータ 「あれはてめぇが勝手に脱ぎ始めたんだろうが! ……あ」
リサコ 「……変態。 もしかして、そんなんだからサトミに振られたんじゃないの……?」
ナオヤ 「彼女がいながらこんな子家に連れ込んでたらな、そりゃ別れたくもなるか……」
ユータ 「ち、違う! こいつが家に来たのはサトミに振られた後で……」
リサコ 「振られた後すぐ連れ込んだの!? うっわ、さいてー!」
ユータ 「そうじゃなくて! だからそれは……うがぁぁぁぁぁぁ!」
テンシ 「やーい、墓穴(ボケツ)掘ってやんの! バーカバーカ!」
ユータ 「全部、てめぇのせいだろぉがぁぁぁぁぁぁぁ!」





ユータ 「くそ、なんとか誤解は解いたが……マジで疲れた……」
テンシ 「お疲れ! 大変だったね、ジュースでも飲む? ほら、注いで来てくれる?」
ユータ 「お前が飲みたいだけじゃねーか!」
テンシ 「べ、別にキミの白いジュースでもいいんだけど……それとも、私のを飲む?////」
ユータ 「黙れ、もう下ネタはいいっつーの……」
テンシ 「ほら、苦いカルピスと甘ーいラブシロップ、どっちがいい? 両方?////
 ん……はぁ……もう、すぐ用意するから……んぁっ!」(いじりながら)
ユータ 「人の部屋で何やってやがる、てめぇ!」
テンシ 「お口クチュクチュモンダミン」(クチュクチュ…ペッ)
ユータ 「……ならいい。 って良くねぇよ! 床に吐き出すな!」
テンシ 「もぅ、話が進まないじゃん! いい加減にしてよね、反省して!」(ぷんぷん)
ユータ 「そもそも話始まってないし反省するのはお前だ……で、どうだったんだよ?」
テンシ 「んー、意外と衆目(シュウモク)の視線を集めるのって気持ちいい。 濡れた」
ユータ 「何の話してんだよ! ゲームの支配状況の話だ!」
テンシ 「んー、ナオヤくんには見えなかったけど、リサコちゃんには見えたねー」
ユータ 「……つまり、リサコはゲーム機の支配下にあるってことか」
テンシ 「うん、あれは間違いないね。 私のカンがそう言ってる!」
ユータ 「カンかよ! ……冗談、だよな?」
テンシ 「アハハ、イッツ・ア・アメリカン・ジョーク! 大丈夫、ちゃんと見えたから」
ユータ 「実際の所、何が見えてるんだ? なんかのマークとか?」
テンシ 「んー、説明しがたいんだけど、こう、オーラみたいなのがモヤモヤっと……
 人間ってさ、悪魔とかに意志に反して操られると、そういうのが出てくるの
 濃い、薄いはあるんだけどねー。 サトミちゃんのはものすっごく濃い。 濃厚」
ユータ 「なるほどな……今のところ、サトミとリサコ、それにあのイケメンか……」
テンシ 「キミに会う前にもあと数人の女の子に見えてたけどねー」
ユータ 「攻略対象のヒロイン候補って奴か……?」
テンシ 「多分ね。 ま、ヒロイン限定ルートか、ハーレムルートかは知らんけど。
 どうせなら炎多留(ホタル)とかプレイしてくれてたらサトミちゃんは無事だったのに!」
ユータ 「炎多留(ホタル)? どんなゲームだ?」
テンシ 「ガチホモとちゅっちゅらぶらぶするゲームだよ! ほら、サトミちゃんは無事だ!」
ユータ 「そん代わりオレの身が危ねぇじゃねぇかよ!」
テンシ 「いいじゃん! なんだったらゲーム関係なく私とパンツレスリングしようぜ!」
ユータ 「だから、何でそうなる!」
テンシ 「……だって……キミの事、一目見たときから、好きに……なっちゃったんだもん」
ユータ 「……え……?」
テンシ 「んな訳ねーだろ! 『……え……?』だってお!」(o_ _)ノ彡☆ギャハハ!! バンバン!
ユータ 「……やべぇ、いくら温厚なオレでもいい加減マジで切れそうだ……
 話が進まねぇ……いい加減、少しは真面目に答えてくれ」
テンシ 「へいへい。 まー、こうして飯食わせてもらってますしねー。 ほれ、話してみ?」
ユータ 「なんでそんな偉そうなんだよ……とにかく、リサコは支配されてたんだな?」
テンシ 「うむ、ガツガツそれクチャクチャはまちがゴクゴクいないよムシャムシャ」
ユータ 「食いながら喋るな! 食うか喋るか、どっちかにしやがれ!」
テンシ 「ガツガツムシャムシャクチャクチャ」
ユータ 「喋れよ! 頼むから食べるの止めて喋って下さいよ!(´;ω;`)」
テンシ 「ゴックン。 間違いなく、リサコちゃんは支配されてるよ。 で、それが?」
ユータ 「オレ、アイツにサトミの事話せたよな? しかも、尾行にまで付き合わせた……」
テンシ 「……なるほど、何で制限がかからなかったのか、って事?」
ユータ 「そう。 リサコもゲームの支配化にあるなら、制限かからないとおかしくないか?」
テンシ 「ほほぅ、そこに気付きましたか……流石ですね、ユータさん」
ユータ 「いい加減キャラが安定しないよな、お前……で、どう思うよ?」
テンシ 「私が知る訳ねーじゃん!」
ユータ 「お前に聞いたオレがバカだった……」
テンシ 「ま、推測(スイソク)は出来るけど。 多分、それがフラグだったんじゃない?」
ユータ 「……は?」
テンシ 「つまりさ、キミが彼女に相談すること、一緒に尾行すること……
 それが、ゲームの流れ通りだったら? それがイベントの発生条件なら?」
ユータ 「なるほど……」
テンシ 「キミが気付かないだけで、キミもゲームの支配下にあるの忘れちゃダメだね
 もしキミが彼女らに相談しない事を選んでたら、無理やり相談させられてたかも」
ユータ 「……クソ、ますますもって最悪だな、あのゲーム機は……」
テンシ 「ま、あるいは単にゲームに影響無い行動だったから、かも知れないけどね?
 ほら、リサコちゃんに見えたモヤモヤは薄めだったし。 攻略対象外の扱いかも」
ユータ 「つまり、攻略対象外だから何してもゲームの進行に影響せず、制限されなかった?」
テンシ 「リサコちゃんをゲームから退場させるとか、そういうのは制限されそうだけどね?」
ユータ 「クソ、その辺りはっきりしないのは、イヤらしいな……」
テンシ 「ゃん、イヤらしいだなんて……そりゃ、私、淫乱だけど、処女なんだよ……?////」
ユータ 「オレはお前のそういうとこが嫌(イヤ)らしいぞ?」
テンシ 「上手い事言ったつもりか! チクショー、面白いぞこのヤロー!」
ユータ 「座布団(ザブトン)投げてくんな! ていうか、どこから持ってきたその座布団!」
テンシ 「天使友達の山田くんが持ってきてくれました」
ユータ 「それ、友達じゃなくてパシリだろ! クソ、さっきまでの真面目なお前はどこへ!」
テンシ 「あー、アイツは神様とファックしてるよ。 でも、私はキミ一筋だからね……?」
ユータ 「どっちもお前だろうが! あー、もぅ! 飯が冷めちまった!」
テンシ 「しょうがないなぁ……ほら、もっかい作り直してこいよ、食べてやるから」
ユータ 「……」(プチッ)
テンシ 「ん、何の音? ……やだなぁ、そんな怖い顔して醜い顔がもっと醜く……ヒッ!」
ユータ 「てめぇ……人が怒らないからって好き放題言ってくれるよなぁ……」
テンシ 「や、やだなぁ……場を和ませるための……って、なんでテーブルに手をかけ……」
ユータ 「……てめぇに、食わせる、タンメンは……ねぇ!」(ドンガラガッシャーン)
テンシ 「ヒィッ! 冷めたタンメンが宙を舞って襲い掛かってくるぅ! ひぎぃっ!」





ユータ 「……で。 なんでお前と一緒に風呂入ることになってるんだ?」
テンシ 「だってキミにドロドロに汚されて……勢いありすぎて、キミまでドロドロに……」
ユータ 「主語を省略するな! タンメンがぶっかかっただけだろうが!
 だいたい、人が風呂入ってるのに勝手に入ってきやがって!」
テンシ 「いいじゃん、可愛い女の子と一緒にお風呂入れるんだぜ? ほれ、興奮した?」
ユータ 「しねーよ。 だいたいお前女とは言えないじゃん」
テンシ 「そういう事は、こっちをちゃんと見ながら言って欲しいなー?」
ユータ 「……なぁ、そんなにオレをからかって楽しいか?」
テンシ 「んー、楽しいよ? 多分、生まれて初めてじゃないかな、こんなに楽しいの」
ユータ 「……マジな話?」
テンシ 「ほら、天使はみな真面目って話したじゃん? あれ、実はちょっと表現が違ってさ
 どっちかというと、神様に従うロボット、って感じ?」
ユータ 「なるほど、確かに神様の命令で残酷な事も平気でするってイメージあるな」
テンシ 「だから、私と話が合う奴って殆どいなんだよねー、皆つまんないし」
ユータ 「むしろ、どういう突然変異でお前が生まれたのかが気になる」
テンシ 「ま、そういう訳で今、すっごく楽しいよ。 ほら、突っ込みもあるし」
ユータ 「そうか……」
テンシ 「ついでに、キミのその貧相なので私の蜜壺(ミツツボ)へ突っ込み入れてくんない?」
ユータ 「お前はそういう奴だよな。 あぁ、良く分かったよ!」
テンシ 「……キミの事、好きじゃなきゃこんな事言う訳ないけどさ……」(ボソッ)
ユータ 「なんか言ったか?」
テンシ 「んーん。 よっしゃ! 上がって牛乳一気飲みすんぞ!」(湯船からザバァ!)
ユータ 「ちょ、前! 前くらい隠せバカ! しかし、こんな調子で間に合うのか……?」
テンシ 「どうかねー、せめて何のゲームか分かるとねー」
ユータ 「……本当にギャルゲーなんだろうな? これ、エロゲーだったりすると……」
テンシ 「あー、最後ヤられちゃうね。 あーあ、サトミちゃんに手出しときゃ良かったのに」
ユータ 「ぐ……」
テンシ 「うっわ、すっげー胸が痛い。 キミの心が分かるってのも考えもんだ」
ユータ 「クソ、主人公役は誰なんだよ……やっぱ、あのイケメンか?」
テンシ 「うーん、可能性はあるけど、どうかねぇ? 今の進行状況にもよるんでない?」
ユータ 「進行状況……って、ゲームの事か?」
テンシ 「そ。 まだプロローグだとしたら、主人公役が出てきてないかもしれない」
ユータ 「なるほど……まだ話の土台作り、って事か?」
テンシ 「まぁ、エンディング寸前だと、裏で二人の仲は進みまくってるとも言える」
ユータ 「ぐおぉぉぉぉぉ!」
テンシ 「ま、どっちにしろ行動制限されるんだから、今は大した事出来ないって
 なぁに、主人公役さえわかっちゃえばすぐ解決するし。 だいじょぶだいじょぶ」
ユータ 「お前、あんまり真剣じゃねぇだろ……」
テンシ 「んなことないって。 最悪天使をクビだぜ? 必死よ、クビ切られるだけに!
 でも、ま。 最悪の場合……私が、サトミちゃんの代わりになってあげるから……」
ユータ 「いらねーよ。 絶対にサトミは……取り戻す」
テンシ 「そう……ま、頑張ろうぜ、私も協力してあげるからさ!」
ユータ 「……協力も何も、お前の不手際じゃん……っていうかさ」
テンシ 「なんだい?」
ユータ 「お前、姿消してサトミに張り付いてた方が良くね?」
テンシ 「え? キミ、今頃気付いた訳? だっせ、あったまわるー!」
ユータ 「気付いてたなら言えよ! 言う前に張り付いてろよ!」
テンシ 「今言われて気付いたんだよ! 言わせんな恥ずかしい!」
ユータ 「今言われて気付いたんだよ! 言わせんな恥ずかしい!
 じゃぁなんでオレ馬鹿にされたんだよ! 行け、今から行って来い!」
テンシ 「おうよ! 行ってきてやんよ!」

 『んじゃ、行ってくる! 私がいないからって自家発電とかすんなよ!』
ユータ 「しねーよ! さっさと行って来い!」
テンシ 『……』
ユータ 「ふぅ……なんてアホなんだ、オレたちは……
 ……
 ……おい。 なんでまだ居るんだよ?」
テンシ 『ギクゥ!? べ、別にキミの自家発電覗こうとか思ってないよ!』
ユータ 「分かった。 お前の考えはよーく分かった。 いいから、行け」
テンシ 『くそぅ、何で分かったんだよ……』
ユータ 「なんとなくお前の雰囲気が感じられるようになったんだよ、嬉しくもねぇ」
テンシ 『しょうがないなぁ……それじゃ、今度こそ行ってくる』
ユータ 「……
 ……ホッ。 今度こそ行ったな、アイツ……それじゃ……(ゴソゴソ)
 クソ、アイツと一緒に風呂入った時にチラチラ見せ付けやがって……我慢の限界だ」
テンシ 『えっ!? 私で本当に興奮してくれてたんだ……!』
ユータ 「なっ!? ふおぅぐわはぁっ! て、てめぇ、行ったんじゃ……!」
テンシ 『いや、飛び出したもののサトミちゃんの家知らなくってさー、聞きに戻ってきたら……』

「まさか、本当に自家発電始めようとするなんてね……しかも、私をオカズに」
ユータ 「お、おま! なんで裸なんだよ!」
テンシ 「いやー、せっかくだし本物があった方がいいっしょ? 別に触ってもいいぜ?」
ユータ 「や、止めろ! こっち来んな、服を着ろ! 近づくなぁぁぁぁ!」





テンシ 「というわけで、サトミちゃんの家までやって参りました」
ユータ 「クソ……オレは何もやってない、やってないんだ……ブツブツ…」
テンシ 「うん、そうだね♪ 私がやってあげたんだもんね♪^^」
ユータ 「誤解を招くような事言うな!」
テンシ 「ほれほれ、あんまり騒ぐとおさわりまんがやってくるぞー?」
ユータ 「……おまわりさんな。 いいから、さっさと行ってきてくれ」
テンシ 「サトミちゃんの部屋はどこー?」
ユータ 「2階の角、右側だ。 ほら、見えてるだろ?」
テンシ 「うぃ。 んじゃ、ちょっくらお邪魔してくるぜ、ゲヘヘ」
(透明になる)
ユータ 『待て、絶対サトミに変なことすんじゃねぇぞ!』
テンシ 『やだなぁ、私を信じて……! ほら、この純粋な目を見てよ!』
ユータ 『見えねぇよ……もういい、頼むから行って来てくれ』
テンシ 『ほほほーい!』

『ただいまー!』
ユータ 『早かったな。 ……で、何かわかったのか?』
テンシ 『うん、サトミちゃん意外と着痩せするタイプ。 寝乱れた姿がエロすぎ。 抜きかけた』
ユータ 『そんなことを調べに行ったわけじゃねぇよ! ……って、寝乱れた?
テンシ 『うむ。 寝てた。 ぐっすりと。 完璧に。 真っ裸で』
ユータ 『いや、最後のは嘘だろ。 ……クソ、無駄足だったか』
テンシ 『あと、もう一つ悪い話がある。 けどまぁ、家に帰ってからの方がいいかなー』
ユータ 『このままサトミの家を張ってたりはしないのか?』
テンシ 『……説明するから、一度家に帰るよ。 ほら、おさわりまん来るし』
ユータ 『だから、おまわりさんだって……』
警察 「あー、キミキミ。 こんな夜更けに、何をしているんだい?」
ユータ 「へ?」
警察 「ここ、キミの家じゃないだろ? ……怪しいな、ちょっとそこの交番まで……」
テンシ 『あーあ、だから来るって言ったのに……』
ユータ 「それならそうとちゃんと言えよ!」
警察 「だからキミが怪しいとちゃんと言っている。 交番まで来て……待ちなさい!」
ユータ 「クッソ! なんでこんな目に逢うんだよチクショー!」(ダッシュ)
テンシ 『自作自演って奴じゃね?』
ユータ 「それを言うなら自業自得だぁ! しかも意味合ってねぇよ!」(全力疾走)
警察 「待ちなさい! 自業自得とは、罪を認めたということか! 待て!」
ユータ 「くっそぉぉぉぉぉぉ!」





ユータ 「……で、悪い話ってなんだよ」
テンシ 「おおぅ、町内1週フルマラソンした割に元気でびっくり」
ユータ 「いいから。 さっさとしてくれ……疲れてもう寝たいんだよ……」
テンシ 「んじゃ、結論。 サトミちゃんに張り付くの無理」
ユータ 「っ! なんでだよ!」
テンシ 「説明はし辛いんだけどさ。 なんとなく感じた訳ですよ、これが」
ユータ 「……だから、何を」
テンシ 「キミと接触したときの感じ。 見え方が変わるっていうか。
 多分、長時間あの子の傍にいると、接触した事になっちゃう」
ユータ 「つまり……アイツの記憶と意識が戻ってしまう……?」
テンシ 「そ。 それはマズイっしょ?」
ユータ 「でも、最悪アイツの意識が戻れば主人公役を聞けるんじゃ……」
テンシ 「……逆。 意識が戻るって事は、操られてる時の意識はなくなる、でしょ?」
ユータ 「あ……そうか。 自分が誰を好きになってたかすら分からなくなる、のか?」
テンシ 「その可能性が高いねー。 しかも誰を好きかわからないまま身体は行動しちゃう。
 それなら、サトミちゃんの口から誰を好きか聞きだせる可能性のある今のままがマシ」
ユータ 「クソ……これ無理ゲーだろ……」
テンシ 「……とにかく、今日はもう休んで頭休めようぜ。 ほれほれ、添い寝してやんよ」
ユータ 「いらねー。 今日はベッド貰うからな? もぅ、こっちは限界なんだよ……」
テンシ 「いいよ、私今日はベッドで寝るから。 それじゃ、おやす……」
ユータ 「待て、オレがベッドで寝るんだぞ?」
テンシ 「うん。 私も、ベッドで寝るんだよ?」
ユータ 「……もう、いい。 頭が回らん……おやすみ……」
テンシ 「おやすみ! 良い夢見なよ!」





サトミ 『ね、ユータ? 私たち、付き合ってるんだよね?
 えへへ……ううん、夢みたいだったから……
 今度さ、デート行こう? ほら、行きたいって言ってた遊園地とか!
 アハハ、そうだね! でもさ、これまでと違って今度はさ……
 幼馴染としてじゃなくて、恋人としてだから……ね?』





ユータ 「……」(ずーん)
テンシ 「なに朝からへこんでるのさ?」
ユータ 「サトミ以外の女と一緒に寝ちまった……」
テンシ 「ほっほぅ! 私を女と認めてくれると申すか! 嬉しいのぅ、嬉しいのぅ!」
ユータ 「そうだ! コイツ女じゃねぇからノーカンだ!」
テンシ 「うっわ、一晩共に過ごした女の前でめっちゃ失礼な事言ってやがる……」
ユータ 「お前男だし! 一緒に寝ただけで手出してないし!」
テンシ 「……ふーん? 寝ただけで手出してない、ねぇ……」
ユータ 「な、なんだよ……」
テンシ 「久しぶりの回想スタートゥ!」





ユータ 「ん……」(寝返り)
テンシ 「ゃん、ユータの寝顔かっわいー!」
ユータ 「……ムニャ……」(ふに)
テンシ 「ぁん……ユータのえっち、私のおっぱいに顔擦(コス)り付けちゃって……////」
ユータ 「……んん……」(ゴロ…)
テンシ 「ふぁ……やぁ、ユータの太腿(フトモモ)が私の大事な所に……ダメ、気持ち良くなっちゃう……」
ユータ 「……ん……」(抱きしめる)
テンシ 「だ、抱きしめられた……あ、ダメ……おかしくなっちゃうぅぅぅ!」(ビクビク)





テンシ 「以上、30分前よりお送り致しました!」
ユータ 「ちょっと待てや! 盛(サカ)ってるのお前の方じゃねぇかよ!」
テンシ 「でも、胸揉んだり、アソコに足擦り付けたり、抱きしめたのはキミだよねー?」
ユータ 「ぐ……そ、それは……その、サトミの夢見てたからで……」
テンシ 「そう、なんだ……サトミちゃんだと思った? 残念、可愛い天使ちゃんでした!」
ユータ 「ちくしょぉぉぉぉぉ!」
テンシ 「……そんなに残念がらなくてもいいじゃん……」(ぼそっ)





テンシ 『さすがに、今日はサトミちゃんいないみたいだねー』
ユータ 『……昨日のがあったからな。 ゲーム機を取り戻すまでの辛抱だ……』
テンシ 『んで、犯人探しはどうするのん?』
ユータ 『……お前がサトミに張り付けない以上、今日も尾行するしかないか……』
テンシ 『うわ、ストーカーへの道を一歩一歩進んでるねい! 犯罪者まで後一歩!』
ユータ 『うるせぇ、サトミの為なんだから良いんだよ!!』
テンシ 『犯罪者は皆そう言う。 アナタの為を思ってしたんだ、だから良い事なんだと』
ユータ 『クソ、事実っぽいから反論しづれぇ……』
タナカ 「よぅ、ユータ! サトミちゃんに振られたんだって?」
フジタ 「フヒヒ、彼女居ない同盟に逆戻りですな、フヒヒ」
ユータ 「うるせーよ、絶対戻らないからな、その同盟には」
テンシ 『あっれー? モブかと思いきや、思ったより仲が良い?』
ユータ 『一応、友達ではある。 あまり認めたくは無いが』
テンシ 『一応、調べておくかい? ホラ、そこのオタくんなんていかにも犯人っぽいし』
ユータ 『見た目と性格と趣味と体格で判断すんな。 意外と良い奴なんだぞ?』
テンシ 『それ以外のどこで判断しろと!?』
ユータ 『……こいつら、トイレに連れてくから、隠れて確認頼む』
テンシ 『あいよ! ところで、私トイレ行くとき男子トイレ、女子トイレどっちだと思う?』
ユータ 『知らねーよ、好きな方行きゃいいだろうが!』
テンシ 『ブー、正解は天使ちゃんはトイレに行かないもん! でした!』
ユータ 『あー、はいはい! いいから、確認だけはしっかりしろよな!』





タナカ 「しかし、いきなり3人で連れションしようとかキモいな、お前」
ユータ 「うるせー、着いてくるお前らもお前らだろうが!」
フジタ 「フヒヒ、男同士友情を深め合うイベントですからな、連れションは!」
テンシ 「……」(ジー)
タナカ 「っ! お、おいユータ! 今、鏡に何か映らなかったか!」
ユータ 「し、知らん! オレは何も見ていない!」
フジタ 「せ、拙者の好みにドストライクなコスプレ美少女が居た気がするでござる!」(振り返る)
テンシ 「……」(ジー)
フジタ 「ま、マジでイマシタワー! しかも、拙者のアソコをガン見しておられる!」
タナカ 「ま、待てよ! どう考えても不自然だろ! 絶対幽霊だって、コイツ!」
ユータ 『ば、馬鹿! 確認終わったなら消えろよ!』
フジタ 「幽霊でも良い! あぁ……美少女幽霊に見られて、拙者興奮してきた……」
テンシ 「……短小包茎(タンショウ・ホウケイ)」(つぶやいてすぐ姿を消す)
フジタ 「っ! ……終わった。 美少女幽霊にそんな事を言われては死ぬしか…… ○| ̄|_」
タナカ 「消えた……やべー! 幽霊だ、幽霊見ちまったよ!」
ユータ 『……結果は?』
テンシ 『タナカくんは標準、フジタくんは短小包茎(タンショウ・ホウケイ)。 やっぱキミの大きいのが一番///』
ユータ 『そっちじゃねぇ!』
テンシ 『あー、はいはい。 二人とも白でしたー、つまんねー!』
ユータ 『分かった。 ……で、この後始末は?』
テンシ 『任せたー』
フジタ 「しかし、この胸の高まりは……もしかして、新しい性癖(セイヘキ)が目覚めた!?」
タナカ 「てか、幽霊見えるってことは霊感あんじゃね? もしかして霊能師デビュー!?」
ユータ 「……ハァ」
テンシ 『いやぁ、なーんにも進展がないまま放課後になっちゃいました、この役立たず!』
ユータ 『てめぇこそ役立たずだろうが! 適当な事ばっか言いやがって、このペ天使!』
テンシ 『上手い事言った! でもどこかの慇懃(インギン)無礼な天使と勘違いされた気がする!』
クラスメイト 「ちょっと、ユータくん? 悪いんだけどさ、今日の掃除当番代わってくれない?」
ユータ 「……悪い、オレ無理だ。 ちょっと用事があってさ……」
クラスメイト 「マジ? マズいなぁ、今日どうしても外せない用事あるんだよねぇ……」
テンシ 『折った折った、フラグを折った! ここで恩を着せて後で美味しい思いを……』
ユータ 『しねぇから。 というか、サトミ以外とのフラグなんぞ片っ端から折って回るわ!』
リサコ 「ユータくん! 今日も例の、行くわよ!」
ユータ 「悪いな、手伝って貰って。 ……ちなみにオレ1人でいいって言ったらどうする?」
リサコ 「は? ……どうしてもっていうなら、任せるけど……? 他にやる事もあるし」
ユータ 「……いや。 聞いてみただけだ。 正直助かってるしな」
リサコ 「そ。 ナオヤ! アンタも行くわよね?」
クラスメイト 「あ! ちょっとナオヤくん! 私、この前掃除当番代わってあげたよね?」
ナオヤ 「げ……!」
クラスメイト 「今日、私外せない用事あるから! 任せたわよ、それじゃ!」(退出)
ナオヤ 「マジかよ……」
リサコ 「……掃除当番なら仕方ないね。 流石に、皆に迷惑掛ける訳にいかないし」
ユータ 「そうだな。 今日は二人で行こう。 ナオヤ、掃除がんばれよ?」
ナオヤ 「あぁ……ユータ、お前こそがんばれよ!」





リサコ 「……今日も、校門前で誰かと待ち合わせか……」
ユータ 「本当に、誰を待ってるんだろうな……」
テンシ 『ねね、さっきの事なんだけどさー?』
ユータ 『なんだよ?』
テンシ 『あの質問。 昨日話してた事の、確認したつもりなのかなー?』
ユータ 『オレ1人で尾行する、って話か? まぁ、そうだな。 制限かかるか確認してた。
 でも、制限かからなかった所をみると、リサコが攻略対象外って可能性が……』
テンシ 『は? 何勘違いしてんの? バッカでー、あったまわる!』
ユータ 『どういう意味だよ……』
テンシ 『ゲームで考えてみてみ? アレがフラグだったとしよう、でも昨日立てたよね?』
ユータ 『……あ』
テンシ 『フラグが立った以上、もうキミが居る居ないは関係ないって可能性もある。
 そのフラグが、サトミちゃんがキミと別れた事を知る、ってフラグだったとしたらね?
 仮に一緒に行動しなくてもこの子1人で尾行してたりするんじゃね? カンだけど』
ユータ 『でも、攻略対象外って可能性も消えない……マジで厄介だな、クソ』
リサコ 「……どしたの? また難しい顔して……ま、気持ちは分かるけどさ」
ユータ 「……悪い。 少し考え事をな」
リサコ 「……あ、またイケメンくんがサトミに……」
ユータ 「……やっぱ、アイツなのか……?」
テンシ 『ま、現実ならキミよりイケメンに惚れるよね。 あっちが数倍カッコいいし!』
ユータ 『オレがサトミと付き合ってたのも現実だっての!』
リサコ 「……うーん、またイケメンくんだけ帰っていったよ?」
ユータ 「そうだ、オレアイツにサトミと付き合ってるか聞きに……グ!?」(再び苦しくなる)
リサコ 「ん? 何か言った?」
ユータ 「……ぁ……」(声が出ず、口をパクパクさせる)
リサコ 「……? 金魚の真似? アンタね、動きが無くて退屈なのはわかるけどさ……」
ユータ 「……ガハッ! あ……い、いや、なんでもない……」
テンシ 『思いも寄らぬ所で来たね、行動制限。 さて、今回の原因はなんじゃらほい?
 今、イケメンくんにサトミちゃんと付き合ってるか聞きに行こうとしたっしょ?』
ユータ 『あぁ……それで、動きが止められた』
テンシ 『それだけだとハッキリしないなぁ……いくらでも原因はこじつけられるし』
ユータ 『アイツに話を聞くことが、ゲームの進行を阻害する……?』
テンシ 『例えば、二人の関係を聞くこと自体がゲームの流れに沿わないとか』
ユータ 『って事は何か? 下手したら、サトミの好きな相手を関係者に聞く事自体NGなのかよ!』
テンシ 『可能性はあるね。 キミがそれを知らない事がストーリーの重要な点なのかも?
 ま、キミの役割はモブっぽいし、そんな重要な部分に絡むとも思えないがな!』
ユータ 『じゃぁなんでだよ!』
テンシ 『んー、他には彼のこの後の行動が重要だけど、キミとの話で阻害(ソガイ)されるとか?』
ユータ 『なんでそれ早く言わねぇんだよ! イケメンもうどっか行っちまったよ!』
テンシ 『今思いついたんだよ! つか、キミが思いつけばいいじゃん!』
リサコ 「あ、サトミが動き出したよ! ほらユータくん、ボーっとしてないで追うよ!」
ユータ 「あ、あぁ!」
テンシ 『サトミちゃんを追うの? ねね、また実体化していい?』
ユータ 『ダメだ! 昨日あれだけ大変だったんだからな、勘弁してくれ……』
リサコ 「……今日もまた昨日と同じだね。 本屋に寄って立ち読みしてるだけ」
ユータ 「そうだな……クソ、やっぱりさっきのイケメンを追っていれば……」
リサコ 「え? やっぱりサトミの相手ってイケメンくんなの?」
ユータ 「い、いや……可能性がある、って話だけどな……」
リサコ 「……やっぱりさ、アンタ直接サトミと話した方がいいんじゃない?
 この二日、誰かと付き合ってるような素振りは見せないしさ……」
ユータ 「そうしたいのは山々なんだけどな……」
リサコ 「振られて腹が立つの分かるけどさ、素直にならないと取り返しつかなくなるよ?」
ユータ 「分かってるんだよ! でも、出来ないんだよ! クソ……」
リサコ 「……なに子供みたいな事言ってるわけ? そんな場合じゃ……」
ユータ 「うるさい! 何も知らない癖に、勝手なこと言うな!」
リサコ 「っ! な……なによ! 勝手に拗(ス)ねて、人に八つ当たりして!
 もう……知らない! 勝手にすれば? 1人で!」(ユータを置いて走り去る)
ユータ 「あ……」
テンシ 「あーあ、やっちまったねぇ! ま、女の子に手を上げなかっただけマシだけど?」
ユータ 「……出てくんなよ」
テンシ 「……今のキミ、1人にしておけないさー。 泣いてる子は見逃せないんでね!」
ユータ 「……泣いてねぇよ……」
テンシ 「……ユータ。 役に立たない私だけどさ、こんな時胸を貸すくらいはできるよ?」
ユータ 「……そういうのは、男の仕事だろ……」
テンシ 「私、半分男なんだからいいじゃん。 ほれほれ、私の胸に飛び込んで来てみ?」
ユータ 「……」(ポスッ)
テンシ 「お? まさか本当に来るとは……ユータがデレおった!」
ユータ 「……慰めてくれて、ありがとな?」
テンシ 「……んもぅ、調子狂うなぁ……元気出しなよ? キミは悪くないから……」(頭を撫でながら)
ユータ 「……あぁ、悪いのはお前だもんな?」
テンシ 「酷い事言うなぁ……事実だけど。 さ、そろそろ立ち直っておくれよ?
 ボケは突っ込みがいないと輝けないんだからさ……」
ユータ 「……そう、だな……」
テンシ 「それにさ……ほら、いい年した男子が、派手なゴスロリ少女に抱かれてるわけだ
 めっちゃ注目浴びてるっちゅーの! うっわ、恥ずかし! もう町歩けねー!」
ユータ 「ハッ……! てめぇ、クソ、ふざけんな!」
テンシ 「おっしゃ、調子戻ってきたじゃん! ほーら、捕まえてごらんー♪」
ユータ 「待ちやがれ! 確信犯だな、てめぇ! 待てっつってんだろうが!」
テンシ 「やだぷー! ほら、ここまでおいでー! アッハハハハ!」





テンシ 「ガツガツムシャムシャゴックン。 ……で、明日からはどうすんべ?」
ユータ 「……リサコは、このまま放置する。 ……別に、謝るのが怖いとかじゃないぞ?」
テンシ 「これでリサコちゃんがどう動くか見るって? 考え方が悪魔じみてきたじゃん?」
ユータ 「綺麗事だけじゃこのゲーム攻略できなさそうだからな……」
テンシ 「今更かよ。 ま、いわばゲームのバグを探すようなもんだからなぁ……
 それで? キミはどうすんの? また尾行する?」
ユータ 「……今のところはそれしか思いつかん。 お前はなんかアイデアあるか?」
テンシ 「サトミちゃんのことはすっぱり諦めて私とちゅっちゅらぶらぶするとか?」
ユータ 「却下」
テンシ 「ぶーぶー! 私処女だし、尽くす女だよ?」
ユータ 「正確には食い尽くすオカマな。 主にうちの炊飯器を」
テンシ 「プッ! 炊飯器だけにお釜ってか? しかもふたなりとオカマもかけてやがる!」
ユータ 「フッ……」(ドヤ顔)
テンシ 「ウザッ! その上手い事言ってやったぜ、的なドヤ顔ちょーウザッ!」
ユータ 「……って! じゃれてないでアイデア出せよ!」
テンシ 「振ったのそっちなのに……んじゃさ、イケメンくんに話聞いてみたら?」
ユータ 「アイツにか? でも、また制限かかるんじゃねぇか?」
テンシ 「リサコちゃんの事忘れた? 今日は制限かかったけど、明日はわからないって」
ユータ 「そっか……今日フラグ立ててたら、大丈夫かもしれないな」
テンシ 「それで、話聞けたら今日何してたか、とかサトミちゃんとの関係聞いてみる、と」
ユータ 「制限かかればイベントの内容が絞り込めるし、上手くいけば関係も分かるか……。
 お前にしちゃ、良い考えだ。 ……普段からこれくらい真面目ならなぁ……」
テンシ 「失礼な! ボケも真面目も全力投球だっての! むしろボケで肩壊すくらい!」
ユータ 「全力でデッドボール投げつけてくる上に肩まで壊すのかよ……」
テンシ 「たった数日で友人関係ぶっ壊しまくったキミに言われたくないし
 あ、いや、そのそんな泣きそうな顔で見ないで? ごめんうそわるかった」





テンシ 「いやぁ、風呂はいいねぇ! 裸の付き合いって奴さいこー!」
ユータ 「うるせぇ、また勝手に入ってきやがって……」
テンシ 「とか言いながらもはや止めようともしないキミ好きだよ。 裸の突き合いする?」
ユータ 「ふざけんな! しかもそれオレも突かれるって意味かよ!」
テンシ 「案外後ろって病みつきになるらしいよ? 昔男娼(ダンショウ)だったトムさんが言ってた」
ユータ 「なんだよその交友関係は!」
テンシ 「あ……キミとの事想像したら勃(た)っちゃった……」
ユータ 「てめぇ! 危険な気がするから出てけ!」
テンシ 「ま、待って待って! 今落ち着かせるから!」(シュッ シュッ)
ユータ 「……あっそ」
テンシ 「だ、だから……性欲はちゃんと……しょ、昇華(ショウカ)させるからね……ウッ」
ユータ 「待てや! 今絶対違うだろ! 最後のドピュッって何だ、最後のは!」
テンシ 「かかと落としの当たったシャンプーボトルが中の液体を噴出しました」
ユータ 「既にボクシングじゃねぇ! てか、何してくれてんの!?」





テンシ 「我々はー、暖かいベッドとー、柔らかい抱き枕をー、期待するものであーる!」
ユータ 「要は、一緒に寝ろって言ってるんだよな? 却下だ」
テンシ 「なんでさ! 昨日はあんなに私の身体を好き放題した癖に!」
ユータ 「だから却下してんだよ! それくらい解れよ、この淫乱天使!」
テンシ 「うっせーよ! 大体、天使が淫乱なのはお前ら人間のせいなんだぞ!」
ユータ 「な……どういう意味だ?」
テンシ 「天使はな、人間のイメージに影響されやすいんだよ!
 ここ近年、天使といえば触手プレイに羽コキ、挙句人外だからって幼女化……
 おかげでもー、身体を持て余す! 触手マジやべーし!
 羽コキなんかしたら飛べなくなるし! 人外だって幼女は挿れたら痛いんだよ!
 大体なんだよ、このコスチューム! スク水じゃねぇか!
 天使はな、古今東西マッパって決まってんだよ! なんで服着させるんだよ!」
ユータ 「……で、本当の所は?」
テンシ 「暇だからえっちゲームやりまくってたら耳年増(ミミドシマ)になっちゃいました!
 この衣装はコスプレです! 天使友達の田中くんに作って貰いました!」
ユータ 「うん、とりあえず田中くんに謝っておけ。 オレは寝る」
テンシ 「あぁん、いけずー! お供させて下さいませー!」
ユータ 「入ってくんな」
テンシ 「あ、今の良い。 ねね、もっかい蹴ってみ?」
ユータ 「……」(ゲシッ)
テンシ 「あふん」
ユータ 「天界に帰れ!」





サトミ 『遊園地、楽しかったね!
 ん……次はどこ行きたい? ま、どこでもいいんだけどさ!
 えー? そうじゃないって! ……あのね、ユータと一緒ならどこでも楽しいから……
 ずっと一緒だったのにね? でも、やっぱり今日は違う気がする!
 え……? ……いいよ。 ん……
 ……えへへ。 私の、ファーストキスなんだから、ね?』





ユータ 「……ん……
 ふぁ……お? 今日はアイツがいない……静かで最高の朝じゃないか!」
テンシ 「ぐっもーにんっ、だーりん! 最高の朝だぜぃ!」
ユータ 「おはよう。 丁度今最悪の朝に変わった所だ……って、てめぇ、なんだその格好!」
テンシ 「んふふ、見てわかんないかなー? ほれほれ、男の夢、裸エプロンだ!」(くるりん)
ユータ 「やめろ、朝っぱらから男のシンボルがチラチラ見えてんだよ!」
テンシ 「そんな事はどーでもいい! この私が、至高(シコウ)の料理というものをお見せしよう!」
ユータ 「まさか……朝メシ作ってくれたのか?」
テンシ 「いえす! メシが冷める、30秒で支度しな!」
ユータ 「おぉ……野菜炒めか。 想像と違って、まともなメシだ……!」
テンシ 「失敬な。 天使にとって食は嗜好品(シコウヒン)であるがゆえに高みを目指すものよ……」
ユータ 「まぁ、普段からフォアグラとか食ってる奴だもんな……食っていいか?」
テンシ 「強くなりたくば喰らえ!!! 喰らって喰らって喰らい尽くせッッ!!!」
ユータ 「別に強くなりたくはねーけど……頂きます」
テンシ 「どう? うまい? おいしい? ほっぺた落ちそう?」
ユータ 「ん……正直、悪くない。 お前、料理出来たんだな……」
テンシ 「聞いた? ユータの口からうまい、だって! お前も一緒に食べちゃいたいって!」
ユータ 「言ってねーよ。 ……でも、ありがとな?」
テンシ 「いやっほぅ! まさに天まで昇る気持ちだぁぁぁぁ!」(バッサバッサと翼で飛び回る)
ユータ 「部屋の中を飛び回るな。 つか、そのまま天まで昇っていってくれ」(文句言いながらも食べる)
テンシ 「あ、忘れるところだった。 これ、お願いします」
ユータ 「あ? ……請求書?
 ……最高級黒毛和牛200g4000円……無農薬有機栽培野菜詰め合わせ3000円……」
テンシ 「大変だったんだぜー? あ、聞きたい? 語るも涙な食材探しの旅の話」
ユータ 「てめぇ! ふざけんな! なんだよこの高級食材は!
 しかも、高級食材使ってなんで味が並なんだよ! 謝れ! 食材に謝れ!」
テンシ 「黒毛和牛さんごめんなさい」(ぺこり)
ユータ 「予想外すぎてリアクションに困る!」
テンシ 「笑えば良いと思うよ?」
ユータ 「ハハハ、そこに居直れ。 一発ぶん殴る」
テンシ 「旦那が暴力を振るうんです……たすけて! おさわりまんこっちです!」
ユータ 「てめぇ、覚悟はいいな?」
テンシ 「ゃん……キミに初めてを捧げる覚悟ならいつでも……ぷげらっ!」(殴られた)





テンシ 『うー、まだジンジンするよぉ……まぁ、実体ないから感じないけど』
ユータ 『手加減してやったんだ、有りがたく思え。 てめぇのせいで今月の小遣い0だ
 ……ま。 朝メシ作ってくれたことには感謝してる。 そのことだけな?』
テンシ 『ニヒヒ、普段出さない手が出たのは照れ隠しかにゃー? このツンドラめ!』
ユータ 『それを言うならツンデレだ……っと、リサコだ』
リサコ 「……」(ぷいっ)
テンシ 『アハハ、完璧に嫌われちゃったねー! マジで謝らなくていいの?』
ユータ 『……あぁ。 リサコには悪いけど、このまま様子を見させて貰う』
テンシ 『カッコいいなおい。 惚れ直しちゃうぜ、憎いよこの色男っ!』
ユータ 『茶化すな。 結構キツいもんがあるんだ、分かってるだろ?』
テンシ 『無論。 キミの気持ちがビンビン伝わってくるからねぇ……』
ユータ 『とにかく、これで何か変化が起きてくれるといいんだけどな……』
テンシ 『恋のキューピッドとしては、目の前で険悪な男女を見ると世話を焼きたくなる』
ユータ 『お前、どっちかというと変なキューピッドだろ……』
テンシ 『ウザッ! 心を通じてドヤ顔が伝わってくるっ! 止めて、ドヤ顔止めて!』





テンシ 『お昼になったけど、どうするんだよー?』
ユータ 『流石に今日はリサコも食事に誘ってくれないしな……早速イケメンに話を聞きに……』
「グ……ぁ……?」(激痛)
テンシ 『お? もしかしてポンポン痛いの? ナデナデしてあげよっか?』
ユータ 『ちげーよ! いつものアレだアレ!』
テンシ 『生理?』
ユータ 『行動制限だ! わかってんだろーが!
 クソ、わぁったよ、イケメンに話を聞きに行くのはNGっつーことだろ!』

「ハッ……ハァ、ハァ……クソ、慣れねぇなこの感覚……」
テンシ 『でも、一つハッキリしたね。 イケメンくんに話を聞く事は、ゲームを阻害(ソガイ)する』
ユータ 『あぁ……イケメンがこの昼になんかイベントを起こす可能性も残ってるけどな』
テンシ 『一つ提案があるよ。 ただ、キミが恥ずかしい思いするかもしれないけど……』
ユータ 『今更だな。 どうすればいい?』
テンシ 『……授業中に、話を聞きに行こうとしてごらん? それで判別できるはず』
ユータ 『なるほど……普通、授業中にイベントは起きないだろうしな』
テンシ 『そ。 彼、授業をボイコットするようなタイプじゃないんでしょ?』
ユータ 『その案乗った。 次の授業中に決行する』
テンシ 『……これで決まりだね』
ユータ 『あぁ。 イケメンに話しを聞く事はNG。 つまり、アイツがフラグを持ってる
 ……これだけを知るのに、いきなり金魚の真似を始めた馬鹿って事になったが……』
テンシ 『ハイリスク・ローリターンだったねぇ! 結局大した進展ではなかったり』
ユータ 『あぁ……考えてみたら、それが分かった所で大した意味はない
 むしろ、サトミの相手を探る事を考えると調査を禁じられたようなもんだからな……』
テンシ 『ハッハー! いよいよもって無理ゲーだねぃ! 難易度クソゲーか!?』
ユータ 『今ほどプレイ中のゲームがゆるゲーであることを願った時はねぇよ……』





テンシ 『それで、もう放課後だけど今日はどうすんの?』
ユータ 「おい、ナオヤ! 今日こそは付き合えよ、サトミを尾行するからな!」(ドクン)
ナオヤ 「あぁ、わかった。 リサコは……?」
リサコ 「……知らない。 勝手にすれば?」
ユータ 「……わかった。 ナオヤ、行くぞ」
ナオヤ 「あ……あぁ……」
テンシ 『ふーん、ナオヤくんと二人で尾行ね。 リサコさんは張ってなくていいの?』
ユータ 『ま、待て! 違う、これはオレじゃない!』
テンシ 『……ハッ。 何言ってんのコイツ、とうとう本当に馬鹿に……』
ユータ 『操られてる! ゲームの支配下に置かれた……勝手に動いてやがる!』
テンシ 『っ! マジ!? じゃぁ……なんかのイベントが始まったってこと!?』
ユータ 『多分な……しかも、オレもその登場人物の1人って事だ、ナオヤもな!
 テンシ、絶対にオレたちから目を離すな! 何かがある……絶対に!』
テンシ 『おうよ! 10メートル先もぼやけるこの天使アイは何も見逃さないよ!』
ユータ 『ダメだ、不安になってきた! 役に立たなさそうだコイツ
 うわ、気持ち悪い……身体の感覚が全く無いのに勝手に動いてる……』
テンシ 『へぇ、支配されるとそう言う風になる訳ねー。 性感も感じないのかねー?』
ユータ 「今日も校門で誰かを待ってるな……」
ナオヤ 「あぁ。 誰を待ってるんだろうな……?」
ユータ 『しかしなんだよ、この茶番! こんな会話もうとっくにしたっての!』
テンシ 『あー、シナリオに従ってるんだろうねー、はたから見ると間抜け極まりない』
ユータ 「お、おいナオヤ! 誰か近づいていくぞ……?」
ナオヤ 「イケメンだ……やっぱりアイツなのか……?」
ユータ 『またこのパターンかよ……イケメンも災難だな』
テンシ 『んー……どうも、今日は違うっぽいよ? ほら……』
ユータ 「あの二人、校舎裏に向かうみたいだ!」
ナオヤ 「追うぞ……」
ユータ 『……マジだ。 イベントが進行してると考えるべきだよな……?』
テンシ 『だね。 さて、イケメンくんがどう動くかねぇ……』
サトミ 「……」
イケメン 「……」
ユータ 「聞こえづらいな……おい、もうちょっと近くに行くぞ」
テンシ 「おぅ……見つかるなよ? 静かにだ……」
イケメン 「……それでね。 今日ここに来て貰ったのは……」
サトミ 「……はい」
イケメン 「キミの事が……好きだ。 ボクと付き合って欲しい」
サトミ 「……っ!」
ユータ 「っ! イケメンが……サトミの事を好き?」
ナオヤ 「これ、告白だよな……? マジかよ……」
テンシ 『なるほど、それでイケメンに二人の関係を聞こうとして制限かかってた訳だ。
 ここで、告白の現場に遭遇して初めて二人の関係を知る、そういう流れって事かー』
ユータ 『おい、つまりアレか? 主人公役はイケメンってことか?』
テンシ 『……待った。 これがギャルゲーなら……』
サトミ 「……あの」
イケメン 「うん」
サトミ 「答え、少し待って貰っても……良いですか?」
イケメン 「……そうだね。 急な話だし、少し考えてみてくれるかな?
 でも、あまり長くは待てない。 ボクはそれほどメンタル強くないから……」
サトミ 「……分かってます。 出来るだけ早く、答えを出しますから……」
イケメン 「ありがとう。 良い返事をもらえることを期待しているよ。 じゃ……」
ユータ 「サトミ……断らなかったな……」
ナオヤ 「あぁ……」
ユータ 『……なぁ、これはどう考えればいいんだ?』
テンシ 『やっぱりね。 アレだ。 イケメンくんはかませワンワンだ』
ユータ 『かませワンワン……? かませ犬って言いたいのか?』
テンシ 『そうそれ。 ほら、アレだ。 イケメンに告白されて、自分の気持ちと向き合って
 んで、自分の本当に好きな人と付き合う事を決める、と。 いやぁ、青春だねぇ!』
ユータ 『待て待て待て。 オレを振った時、アイツ好きな奴が居るって言ったんだぞ?』
テンシ 『だから、居るんでしょ。 でも、何らかの理由で迷っているとか……』
ユータ 『そんな中途半端な状態なのにオレは振られたのかよ……』
テンシ 『おいおい、サトミちゃんはゲームに支配されてるっての、忘れんなよ?
 ほら、ゲームのヒロインは誰とも付き合った事ないって場合のが多いし?
 キミと別れる事、彼氏がいない事が大前提って事なんでしょ、ゲームとしては』
ユータ 『クソ、理解は出来るけど納得いかねぇな……』

「……とんでもない所見ちまったな……」
ナオヤ 「……帰るか」
ユータ 「あぁ……」
テンシ 『ん、そろそろイベント終わりかな? ほれ、シャンとしないと戻った時コケるぜ?』
ユータ 『あぁ、分かってる……う』

「……ハッ! ハァハァ……戻った、か……?」
テンシ 「だいじょぶ? そんなに興奮して……寝取られ気分味わって欝勃起(ウツ・ボッキ)?」
ユータ 「疲れてんだよ! だいたいまだ寝取られてねぇ! てか、学校で実体化すんな!」
テンシ 「なんだよー、実体化しないと撫でてやれないだろー?」(なでなで)
ユータ 「……悪い」
テンシ 「……どうする? サトミちゃん、追う?」
ユータ 「……そうだな。 またイベントが起きる可能性もあるし」
テンシ 「おっしゃ! そうと決まれば行くぜ! ほれ、息整えないと変質者だぞ?
 あ、どっちにしろストーカーだったな、HAHAHA!」
ユータ 「うるせー! 行くぞ、さっさと姿を消しやがれ!」
サトミ 「……」(スタスタと歩く)
ユータ 『……? 何かおかしい』
テンシ 『キミの頭が? っ! まさか、アレが起たなくなったとか!?』
ユータ 『なんでそうなるんだよ! 違う、サトミの様子がおかしい!』
テンシ 『……? 別にただ歩いてるだけじゃん? キミ、本気でおかしくなった?』
ユータ 『そうじゃない! この道は遠回りだ、普通サトミはこんな人気の無い道を通らない!』
テンシ 『っ! つまり……ゲームに支配されてこの道を歩かされている?』
ユータ 『その可能性が高い……そして、こんな人気の無い道で起きるイベントといえば……』
テンシ 『アッハハ! もう一つしかないね! 強姦、レイプ、強制妊娠!』
ユータ 『妊娠は関係ねーよ! てかこれ本当にギャルゲーなんだろうな、もしかすると……』
テンシ 『エロゲーなら確実にえっちシーン突入だねぃ。 サトミちゃんの処女膜、さようなら!』
ユータ 『不吉な事言ってる場合かよ! クソ、サトミを止めないと……グ』(ドクン!)
テンシ 『あー、ホントにイベントみたい。 制限かかったってことは……まずいね、こりゃ』
ユータ 『クソ、おいテンシ! 実体化してサトミを止めてくれ!』
テンシ 『おいおい、そんな事したらサトミちゃんの意識戻った上でレイプされかねないぜ?』
ユータ 『なら、誰か呼んできて……って、人気ねーし! クソ、最悪じゃねーか!』
テンシ 『……? ちょいと、キミ、動けてるじゃん? イベント終わり?』
ユータ 「……」(スタスタ)

『は……? オレ動いてなんて……待て、まただ! さっきのは行動制限じゃない!』
テンシ 『へ? じゃぁ、まさか……』
ユータ 『さっきのは行動支配だ! 身体が勝手に動かされてる!』
テンシ 『おおっとぉ? もしかしてキミが暴漢(ボウカン)からサトミちゃんを救うイベントキター?』
ユータ 「……」(スタスタ)

『っ! そうか、それなら……!』
テンシ 『な訳ないじゃーん! キミ、主人公じゃないんだぜ? とすると、だ。
 考えられる役割っつったら、一つしかないように思えるんだがねぇ……?』
ユータ 「……」(立ち止まる)

『まさか……おい、テンシ! オレを止めろ、早く!』
テンシ 『分かってる!』(具現化)
「ぐぬぬ……ちょ、ちょっと手加減して……!」
ユータ 『手加減も何も、何も出来ねぇんだよ! そ、そんなに力強いのか!?』
テンシ 「こ、これは無理……ゲームの強制力がここまで……キャァッ!」(弾き飛ばされる)
ユータ 『お、おい! テンシ、大丈夫か!』
テンシ 「ご、ごめ……もやしっ子な私にはちょっと荷が重かった……バタンキュー」
ユータ 『テンシ! しっかりしてくれ! 頼む、もうお前しか……!』
サトミ 「……?」(立ち止まる)
ユータ 「……」(ゆっくり手を伸ばす)

『お、おい……やめろ……お前、オレの身体だろうが……!』


「……っ!」(サトミの肩を乱暴に掴む)
サトミ 「っ! だ、誰ですか!? キャッ!」(押し倒される)
ユータ 『テンシ! 起きろ! クソ、身体動けよ! なんで、なんでだよ!』

「ハァハァ……サトミ……! サトミ!」
サトミ 「えっ!? ユータ……! や、ヤダ! 止めてよ!」
ユータ 『頼む! 動け動け動け! 動けよ、オレ! 動けっつってんだろぉが!』

「サトミ、サトミ! お前が……お前が悪いんだ! オレ、ずっとお前の事好きだったのに!
 あんな、イケメンなんかにお前を渡すくらいなら……オレは!」
サトミ 「やめて! 怖いよ! こんなの……こんなのユータじゃない!」
ユータ 『そうだよ! オレじゃねぇんだよ! だから、やめてくれよ!』

「クソ……オレが……オレのもんに……えぇい、服が邪魔だっ!」(サトミの服を引き裂く)
サトミ 「っ! ヤダヤダ! お願い、許してよ! 私、好きな人が……!」
ユータ 「うるせぇ! どうせイケメンなんだろ! あんな奴にヤられる前にオレが!」

『クソ、マジで止めろ! こんな形でサトミを穢(ケガ)したくねぇよ! おい!』

「ハァハァ……サトミ、オレ、お前の事好きだ……だから……!」
サトミ 「イヤ……イヤァ……誰か、助けて……」(大粒の涙が溢れてくる)
ユータ 『やめろやめろやめろやめろぉぉぉぉ! 誰でもいいから、助けてくれよぉぉぉ!』

「サトミ……大丈夫、怖くない、怖くないから……」(サトミの首筋を舐め出す)
サトミ 「止めて……止めてよぉ……」
ユータ 『うがあぁぁぁぁぁぁあっ!』
??
ナオヤ
「てめぇ! 何してやがるっ!」(殴りかかる)
ユータ 「ガァッ! ゲフッ……!」
サトミ 「え……あ……」
??
ナオヤ
「ふざけんな! てめぇ、サトミに何しやがる! 死ね! 死んでしまえ!」(ユータを一方的に殴る蹴る)
ユータ 「グハッ! ガッ、ゲフォ! オエェェ……」
??
ナオヤ
「この! この! 変態が! お前! 殺してやる!」
サトミ 「や、やめてぇ! それ以上やったら、ユータが死んじゃう!
やめてよ! ……ナオヤ!」
ユータ 『……え?』

『ナオヤ ガ サトミ ヲ タスケタ』

『ナラ シュジンコウ ハ……』

『ナオヤ……?』
ナオヤ 「サトミ! 大丈夫か!」
サトミ 「わ、私は……大丈夫。 服は破けたけど、ナオヤが助けてくれたから……」
ナオヤ 「っ! わ、悪ぃ。 後ろ向いてるから、これ羽織ってくれ……」
サトミ 「……ありがと……」
ナオヤ 「ユータの奴……一体なんで……?」
サトミ 「私の事好きだったって……私がイケメンくんと付き合うって誤解して、それで……」
ナオヤ 「だからって襲って良いってことにはならねぇよ。 こんなクズだったとはな……」
サトミ 「……」
ナオヤ 「でも良かった、間に合って……オレ、ずっとお前の事探してたんだ」
サトミ 「私の事を……?」
ナオヤ 「ごめん。 さっきの告白、オレも見てた。 それで気付いたんだ。
 ……幼馴染だから気付かない振りしてた。 でも……
 オレ、お前の事が好きだ。 それを伝えたくて……」
サトミ 「ナオヤ……(涙が溢れ出す)
 私も……私もナオヤの事が……好き! 好きなの!」
ナオヤ 「サトミ……ありがとう。 オレと……付き合ってくれるか?」
サトミ 「……うん! ナオヤ、大好き!」(キス)
ナオヤ 「オレも……大好きだよ、サトミ!」(抱きしめる)
サトミ 「……ねぇ、ユータ……大丈夫かな?」
ナオヤ 「こんな奴どうでもいい。 どうせ死にはしねぇよ……
 それよりお前の方が心配だ。 明るい所で怪我してないか確認しないと……」
サトミ 「……うん」
ナオヤ 「送っていくよ。 後ろ向くから、上着きちんと着てくれるか?」
サトミ 「……ナオヤは、紳士なんだね……////」
ナオヤ 「バーカ、そんなんじゃねぇよ! ほら、さっさと着てくれ」
サトミ 「……うん」ゴソゴソ





ナオヤ 「……聞こえるか、ユータ? サトミはオレが貰うぜ……そこでゆっくり寝てろ、バーカ」





ユータ 『……』
テンシ 「ユータ、生きてるー……?」
ユータ 『オレは……どうなった?』
テンシ 「大丈夫、まだ天界には行けないみたい。 意識は失ってたみたいだけど……」
ユータ 『……まだゲームの支配下にあるみたいだな。 痛みを感じないのは助かる』
テンシ 「今のうちに心構えしときなー? 支配がとけたら、感覚が一気に戻るし」
ユータ 『ハッ、痛みが一気に襲ってくるわけか。 クソ、あいつ好き放題蹴りやがって……
 っと。 支配が解けそうだ……感覚が戻ってくる……』

「……ぅ? ……ぁ……ぁあぁあぐおぉぉぉぉ! 痛えぇぇぇぇぇぇぇっ!」
テンシ 「ユータ! しっかりしろー! 死ぬな! せめて私とえっちしてから死ね!」
ユータ 「ひいぃぃぃ! く……うがぁぁぁぁぁ!」(ガクガク)
テンシ 「ユータ……! うっわ、これやっべー! 死ぬなー、マジで死ぬなー!」(ギュー)
ユータ 「ゲホッ! ハァハァ……く……テンシ……もう、大丈夫だ……」
テンシ 「ユータ、無理すんな! まだ動ける状態じゃないって!」
ユータ 「ハッ、お前が心配するとは……かなり酷いみたいだな……」
テンシ 「馬鹿! 今は喋らない! とにかく、家まで運ぶから……」
ユータ 「……もやしっ子のお前には無理だ……もう少し休めば、動けるから……」
テンシ 「……分かったよぅ。 このまま、少し横になってて……」
ユータ 「……抱きしめてくれてたんだな……すまん……」
テンシ 「私、天使だからー。 目の前で傷ついた人がいりゃ助けるに決まってるじゃん?」
ユータ 「ハッ、ペ天使の癖に……」
テンシ 「ところでユータ……さっきの、覚えてるよね? 主人公役が……」
ユータ 「悪い、今は……その話は、帰ってからだ。 でないと……動けなくなりそうだ」
テンシ 「ん……で、どう? そろそろアソコだけでも動かせるんじゃないかい?」
ユータ 「アソコだけ動いてどうするんだよ……っと、そろそろ大丈夫」(ゆっくり起き上がる)
テンシ 「あれだけ殴る蹴るされて、もう動けるとか……連邦(レンポウ)のMS(モビルスーツ)は化け物か!」
ユータ 「だれがガンダムだよ……っと」
テンシ 「ほれ、肩貸しちゃる。 でも女に肩借りるとかだっさ!」
ユータ 「あぁ、マジでダサいな……人に逢わない事を祈る……」
テンシ 「ちゃんと体重かけてる? よーし、それじゃしゅっぱーつ!」(なぜか駆け出す)
ユータ 「アホか! この状態で走れるか! おい、歩けよ、歩いて下さいよ!」(ズルズルと引きづられる)





ユータ 「痛っ! もっと優しくしてくれよ……」
テンシ 「ゃん! その代わり、私の処女奪うときは優しくしてね……////」
ユータ 「……自分でやります。 ちょ! 消毒液鼻に入れようとすんな!」
テンシ 「……でさ。 さっきの事なんだけど……」
ユータ 「……間違いないよな。 主人公役は、ナオヤだ……」
テンシ 「うん。 まさかヒロインをモブが助ける訳ないしね……」
ユータ 「でも、お前ナオヤは支配されてないって……あの時、確認したよな?」
テンシ 「……ごめん、そこは私も勘違いしてた。
 言ったじゃん? 意思に反して操られてる場合、捻じ曲がった運命が見えるって。
 ナオヤくん……ナオヤは、意思に反してなかったんだよ。 だから、見えなかった」
ユータ 「意思に反してない……つまり、意図的に操られてるってことか?」
テンシ 「意図的というか……ゲームの進行が、自分の思惑通りってことだろうね」
ユータ 「な、なぁ……それってよ、つまり……」
テンシ 「キミから、サトミちゃんを奪うことが、ナオヤの思惑通りって事さね……」
ユータ 「嘘だろ……オレとアイツは親友でよ……ずっと一緒だったんだぜ……?
 サトミと付き合うって報告した時も、凄く喜んでくれてよ……それが……」
テンシ 「……言い辛いけどさ。 裏ではキミを妬み、裏切ろうと画策(カクサク)してたって訳だ」
ユータ 「黙れ! ナオヤは、ナオヤはそんな奴じゃねぇ!」
テンシ 「事実から目を背けんな! キミも聞いただろ、アイツの捨て台詞を!」
ナオヤ 『……聞こえるか、ユータ? サトミはオレが貰うぜ……そこでゆっくり寝てろ、バーカ』
ユータ 「でも……それでも……」
テンシ 「ハッ! 別に事実を認められないならいいけどさ、サトミちゃんはどうなる?
 このままナオヤの上辺だけ信じて、サトミちゃんを奪われたまま何もしないのか!?」
ユータ 「く……」
テンシ 「しっかりしなって。 私にあんだけ弄られても平然としてたキミはどこ行った?
 前にも言ったじゃん? キミのメンタルの強さは世界一だって!」
ユータ 「そんな事一言も聞いたことねーよ……」
テンシ 「アハハ、その調子その調子! ま、今だけは泣くがいいさ。 少しだけな?
 泣くだけ泣いてから、逆転する方法を考えようぜ! ほれ、こっち来てみ?」
(ユータを引っ張って自分の胸元に押し付ける)
ユータ 「うわっ!」
テンシ 「ちっぱいで良ければ、貸してやんよ。 今日は私を女と思って、甘えてみな?」
ユータ 「……悪い。 絶対顔見んなよ……?」
テンシ 「おうよ。 壁の染みでも数えてるから、その間に泣くなり犯すなりお好きに!」
ユータ 「……く、うぅ……うわあぁぁぁぁぁぁぁ……!」
テンシ 「主よ、迷える子羊に光を……」





テンシ 「……もう落ち着いた? そろそろ、ちっぱいが涙で濡れて冷たいんだけど」
ユータ 「……あぁ、落ち着いた。 というか泣いてねーし。 ちっぱいどころかまな板だし」
テンシ 「よーし、良い感じじゃん? それじゃ、状況を整理しようぜ」
ユータ 「あぁ。 オレたちを支配してるゲームはエロゲーかギャルゲーってとこはいいな?」
テンシ 「いや、ギャルゲーで確定だね」
ユータ 「……なんでそういい切れるんだ?」
テンシ 「エロゲーなら、さっきのイベントはもっとねっとりエロエロになってるはず!」
ユータ 「く……ある意味、ギャルゲーでマジ助かったって所か……
 で、だ。 配役は、主人公がナオヤ、ヒロインはサトミ、かませがオレとイケメンだな」
テンシ 「リサコちゃんはわからないままだねー、まぁ、ヒロイン候補かな?」
ユータ 「それで、ナオヤは……オレからサトミを奪う為、お前のゲーム機を起動した……」
テンシ 「拾ったのは偶然だろうけどね。 まぁ、最初は半信半疑だったんじゃね?」
ユータ 「……どっちにしろ、結果が問題だ。 今、奴はサトミと付き合うことになった」
テンシ 「だね。 ゲームにもよるけど、ヒロイン攻略したんだからエンディングは近い」
ユータ 「エンディングになっても、その後が描かれてれば支配は続くんだよな?」
テンシ 「説明書の通りならね。 つまり、なーんにも状況変わってないっつーの!」
ユータ 「いや、充分変わってるっての。 さっきは気が動転してたけどさ、これで解決だろ?」
テンシ 「なんでさ?」
ユータ 「お前、最初言ってたじゃん。 ゲーム機を取り戻せば、サトミも取り戻せるって」
テンシ 「あ……」
ユータ 「持ち主が分かったんだしさ、アイツいないときにお前がゲーム機取り返せば……」
テンシ 「……ユータ、ごめん。 私、ユータに謝らなきゃいけない」
ユータ 「……なんだよ。 そんな神妙な顔して……」
テンシ 「私、嘘……ついてた。 ゲーム機を取り戻しても……サトミちゃんは、帰ってこない」
ユータ 「っ! どういう……ことだ?」
テンシ 「……これ、見てくれる?」
ユータ 「説明書? ってか、こんなシリアスな場面でもパンツから出すんだな……」
テンシ 「この前読んだとこの3ページ目……」
ユータ 「『一度ゲームを始めると、始めた本人以外に止めることは出来ません』……」
テンシ 「……多分ね、このゲーム、私にも止める事出来ないと思う……」
ユータ 「……じゃぁ、ゲーム機を取り戻しても、ゲームは続いたままってことか……?」
テンシ 「私ね、最初ユータを利用するだけの道具と思ってたんだ……
 ゲーム機さえ取り戻しちゃえば、誰も使わないからゲーム中でもバレないし
 だから、それでゲーム機持って天界帰っちゃえば解決! ってね……」
ユータ 「テンシ……」
テンシ 「今は違うよ! 元はと言えば私の不始末だし、サトミちゃんもこのままじゃ……
 でも、そんな汚い事考えてたのは本当。 だから、ごめんね……?」
ユータ 「……いいさ。 正直に言ってくれたしな」
テンシ 「でも! ユータの事、裏切って切り捨てようと……!」
ユータ 「今はそう思ってないんだろ? 思ってるなら、こんな話する必要ないんだから」
テンシ 「ユータ……」
ユータ 「話を戻すぞ。 今の話からすると、アイツにゲームを止めさせなければいけない」
テンシ 「……そーいうこと。 脅してでも、懐柔(カイジュウ)してでもいいけど、アイツでないとダメ」
ユータ 「……なぁ。 これ、これまで以上に無理ゲーな気がするのはオレだけか?」
テンシ 「ハッ、たけしの挑戦状ノーヒント並だね」
ユータ 「脅す、懐柔(カイジュウ)する、か……懐柔なんて聞く耳持たないだろうしな」
テンシ 「キミが脅すと行動制限入りそうだし、私は人間に干渉したらクビになりそう」
ユータ 「……とにかく、一度アイツと話をしてみるか」
テンシ 「……いいの? 多分メチャクチャ傷えぐってくるぜ? 私にはかなわねーけど」
ユータ 「ハハッ、それこそてめぇで慣れてんだよ、こっちは!
 で、それは置いといて。 オレがアイツと話してる間に、確認して欲しい事がある」
テンシ 「おっけー! 任せとけ! それじゃ、行ってくる!」
ユータ 「まだ何にも言ってねーよ! ダメだコイツ!」





ユータ 「……ぐ……」
テンシ 「(お)はよん。 身体の具合はどうだい?」
ユータ 「……昨日よりゃマシだけどな。 すっげー痛い」
テンシ 「あー、こりゃひどい。 全身青アザだらけじゃん?」
ユータ 「骨は折れてなさそうだけどな……」
テンシ 「大丈夫? 学校行けそう?」(さすさす)
ユータ 「……無理してでも行くさ。 アイツと話しないとな」
テンシ 「学校までは着いて行くから。 流石に一人では行かせらんないよ」(さすさす)
ユータ 「……悪いな。 撫でてくれて、その、ありがとう」
テンシ 「気にすんな! 朝飯出来てるからさ、無理なら食べなくてもいいけど……」(さすさす)
ユータ 「せっかく作ってくれたんだ、食べるさ」
テンシ 「……そっか。 よし、ならば食らうがいい!」(さすさす)
ユータ 「……おい」
テンシ 「なんぞ?」(さすさす)
ユータ 「さっきからなんでオレの股間を撫でさすっている?」
テンシ 「いやぁ、もしかしてここも蹴られたりしてないかなーって。
 ほら、大事な所だし? いや、硬くなるみたいだし、正常でよかった」(さすさす)
ユータ 「確認出来たならやめろ、この馬鹿!」





テンシ 『いやぁ、足引きずったりして、ホント満身創痍(マンシン・ソウイ)だねぇ!』
ユータ 『……マジキツいんだ、ちゃかさないでくれ』
テンシ 『はいはい。 っと、マズいよ……サトミちゃんが来る!』
ユータ 『え……? しまった、鉢合わせか!』
サトミ 「……ぁ」(ビクッ)
ユータ 「……」
サトミ 「……ィャ、来ないで……」(後ずさり)
ユータ 「ま、待てオレは……」
??
ナオヤ
「サトミ、お待たせ!」
サトミ 「ぁ……ナオヤ!」(ナオヤへ駆け寄って抱きつく)
ユータ 「ぁ……」
ナオヤ 「おはよう、サトミ(キス)
 ……で、てめぇは何してやがる、ユータ(ギロッ)
 昨日あんな事しといて! サトミに近づくな!」
ユータ 「……」
ナオヤ 「返事くらいしろよ……またぶん殴られてぇのか!」
サトミ 「やめて!」
ナオヤ 「でもよ……」
サトミ 「……ユータ『くん』。 私昨日の事誰にも言わないから。
 ……だから、もう二度と近づかないで。 私にも、ナオヤにも……」
ユータ 「……」
サトミ 「……ナオヤ、行こ?」(ナオヤの腕に抱きついて)
ナオヤ 「あぁ……」
ユータ 「……待て、ナオヤ。 放課後、話がしたい」
ナオヤ 「こっちには話することなんかねぇよ。 二度と近づくなって言われたろ?」
ユータ 「放課後、体育館裏で待ってるからな……」
ナオヤ 「知るか! さ、行こう、サトミ」(なでなで)
サトミ 「……ん////」
テンシ 『……大丈夫、ユータ……?』
ユータ 『……大丈夫に見えるか?』
テンシ 『見えない……ごめんね、ユータ……』
ユータ 『お前のせいじゃない。 謝るな……』
テンシ 「……ユータ」
ユータ 「お、おい! こんな往来(オウライ)で実体化すんな!」
テンシ 「……」(抱きしめる)
ユータ 「……テンシ」
テンシ 「……ごめん、こんな事くらいしかしてあげられない」(抱きしめる手に力がこもる)
ユータ 「……分かってくれてる奴が一人だけでもいるだけで救われてるっての」(テンシの頭を撫でる)
「ほれ、いつもの調子はどうした? そんなんじゃこっちが滅入っちまう」
テンシ 「ん……そうだな! ズタボロで表情まで暗かったら救いようがないもんな!」
ユータ 「ハッ! 少しくらい憂(ウレ)いがあったほうがモテるんだよ!」
テンシ 「……憂いがあってもなくてもカッコいいよ、ユータは」(ボソッ)
ユータ 「あぁ? なんか言ったか?」
テンシ 「なんでもない! ほれ、急がないと遅刻すんぞ!」





クラスメイト 「ね、ねぇユータ! どうしたのよ、そのケガは!」
フジタ 「酷い有様でござるな。 女だったら綾波かと思う所でござる」
ユータ 「……ちょっとケンカしてな」
クラスメイト 「ケンカ弱いくせに……どうせ一方的にやられてたんでしょ?」
フジタ 「なんでしたら拙者と共に空手でも習いますかな? 通信教育でござるが」
ユータ 「通信教育の空手って意味あんのかよ……」
テンシ 『ユータ、私そろそろ確認に行って来ようかと思うんだけど……』
ユータ 『あぁ、頼む』
テンシ 『……ホントに一人で大丈夫?』
ユータ 『大丈夫だ。 それより、頼むぞ? お前にしか出来ないんだからな』
テンシ 『まーかせて! 絶対にお土産持って帰るからね!』
フジタ 「……ボーっとしてるが、本当に大丈夫でござるか?」
クラスメイト 「え、マジで頭やられてないよね……?」





ユータ 「……来たか、ナオヤ」
ナオヤ 「よぉ、相変わらず身体だけは丈夫みたいだな。 結構本気で蹴り入れたんだが」
ユータ 「あぁ、メチャクチャ痛かったよ……だが、そんなこたぁどうでもいい
 ナオヤ……どういうつもりだ?」
ナオヤ 「ハァ? お前、わざわざそんな事聞くために放課後呼び出したのかよ……?
 それにどっちかというとこっちの台詞だろ? どういうつもりでサトミ襲ったんだよ?」
ユータ 「お前の方が良く知ってるだろ? 時間の無駄だ、腹の探り合いはいらねぇよ。
 ナオヤ、なんでだ。 なんでオレたちをゲームで操ろうとする?」
ナオヤ 「……ユータ。 なんでてめぇがゲームの事知ってやがる」
ユータ 「こっちが聞いてんだ、先に質問に答えろよ。 そしたら教えてやんよ」
ナオヤ 「……ハッ! オレぁな、昔っからてめぇの事が大ッ嫌いだったんだよ!」
ユータ 「っ!」
ナオヤ 「親友面しやがって、吐き気がする! 幼馴染だぁ? こっちから縁切りてぇよ!
 しかも、好きだったサトミはお前と付き合いだして? オレだって幼馴染なのに?
 てめぇ、付き合った翌日に間抜けな顔して報告に来たよな、サトミと一緒に……
 あの時のオレの気持ちが分かるか!? お前とサトミ、二人に裏切られた気持ちが!」
ユータ 「ナオヤ……お前、そんな風に……」
ナオヤ 「だからよ、あのゲーム機を拾った時ワラにもすがる思いで試してみたよ……
 うちにあった中で、一番オレの望む状況に近い結果になりそうなゲームで!
 そしたらよぉ……次の日、お前いきなり別れたとか言い出すんだもんな!
 あの時ぁ、内心大笑いだったぜ! あのゲーム機が本物だったんだもんな!」
ユータ 「……やっぱりてめぇがゲーム機を拾ってたんだな……
 しかも、それでサトミの心と身体を弄びやがって……てめぇ、そこまでクズだったかよ!」
ナオヤ 「ハン! サトミは今の方が幸せなんだよ、アイツの為にやってんだ!」
ユータ 「ふざけんな! 全部てめぇの私利私欲だろうが! このクソやろ……ガァッ!」(ドクンッ)
「ぁ……うぁ……」(苦しくて再び口をパクパクさせる)
ナオヤ 「あ? てめぇ、今オレを殴ろうとでもしたか? なるほど、行動制限がかかったか
 そりゃそうだよな。 お前は、オレにボコボコにされる暴行犯の役なんだぜ?
 お礼参りするなんてシナリオ、ゲームにはなかったからなぁ……アッハハハハ!」
ユータ 「ッ! ガハッ……クソ、こいつ殴らせろよ……」
ナオヤ 「おい、こっちは答えてやったぞ? 次はお前の番だ、なぜゲーム機の事知ってる?
 しかも、お前元の記憶と意識があるよな? まさかとは思うが……」
ユータ 「お前も説明書は読んでるんだろ? そう言う事だよバーカ」
ナオヤ 「へぇ、マジで天使なんて居んのか! もしかして、お前と住んでるってアレか?
 そういや、羽ついてたもんなぁ……コスプレかと思ってたけど、マジもんか、あれ
 惜しいな、知ってたら天使も攻略対象なゲームにしてやる所だったのによ!」
ユータ 「てめぇ!」
ナオヤ 「しかし、良い情報をありがとう。 お前に前の記憶があるってんなら……
 これからサトミとオレの仲を見せ付けてやると、お前の反応が楽しみだよなぁ……」
ユータ 「ナオヤ! てめぇ……許さねぇからな!」
ナオヤ 「許してくれ、なんて頼んだ覚えねーぞ? むしろ、お前が土下座して頼み込めよ。
 お願いします! サトミには手を出さないで下さい……てな?
 ま、聞かねーけど! なんだったらお前の目の前で犯してやるよ!
 手つけてないんだろ? サトミの初マンコ見せてやるよ……チンポ突っ込みながらな!」
ユータ 「ふざけんな! クソ、てめぇは、てめぇだけは殺す! 殺して……ガァッ!」(ドクンッ)
ナオヤ 「学習しないな。 お前はオレを殴れないんだよ……こっちは殴れるけどな!」
ユータ 「ゲフッ!」(ドサッ)
ナオヤ 「あーあ、靴が汚れちまった。 もぅ、いいか? オレこれからサトミとデートだからよ」
ユータ 「クソ、クソォォォォ!」
ナオヤ 「安心しろ、昨日の事は警察には言わねぇよ。 サトミが止めてくれって言ってたしな。
 それと良い事教えておいてやるよ。 オレな、今どのルートに居ると思う?」
ユータ 「ルート……?」
ナオヤ 「ゲームの話だよ。 ほら、誰々ルートとかあんじゃん? あれよ、あれ」
ユータ 「サトミルートじゃないのかよ……?」
ナオヤ 「残念。 オレが選んでる行動だとな……ハーレムルートに突入すんだよ」
ユータ 「な……! てめぇ、まさか……」
ナオヤ 「おうよ! この学校のめぼしい女はオレが頂いちゃいますんで! んじゃな!」
ユータ 「待て! 待ちやがれ! ナオヤ、ふざけんなぁぁぁぁぁ!」

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